遅すぎる「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」

 マスク不足が世間の注目を集め、マスクが買えない、という国民の声がやっと反映された今回の政令改正。管理人としては、遅すぎる、という気がします。

 このような事態は今後も起こりうること。それを政令改正で対応していたのでは、手遅れになるのは当たり前です。

 日本でマスク不足が顕著になったのは、1月29日頃のようです。今回の政令改正の公布が令和2年3月11日、施行が3月15日です。1ヵ月半ばかり経っています。これでは遅すぎです。

 今回の法令改正は、国民生活安定緊急措置法の改正ではなく、国民生活安定緊急措置法施行令の一部改正です。

 法第26条第1項及び第37条の規定に基づき、施行令を改正したものです。

国民生活安定緊急措置法
第二十六条 物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において、生活関連物資等の供給が著しく不足し、かつ、その需給の均衡を回復することが相当の期間極めて困難であることにより、国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じ又は生ずるおそれがあると認められるときは、別に法律の定めがある場合を除き、当該生活関連物資等を 政令 で指定し、 政令 で、当該生活関連物資等の割当て若しくは配給又は当該生活関連物資等の使用若しくは譲渡若しくは譲受の制限若しくは禁止に関し必要な事項を定めることができる。

第二十七条 消費者委員会は、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、生活関連物資等の割当て又は配給その他この法律の運用に関する重要事項を調査審議する。
2 消費者委員会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣又は関係各大臣に対し、意見を述べることができる。

このような法律では、有事の際に役に立ちません。統制する品目を決めるのに政令で定めることになっていることから、政令改正というとても時間のかかる手続きが必要となるからです。

 今回の政令改正は、通常の政令改正とは異なり、政令改正としては驚異的なスピードで施行にこぎ着けたといえます。しかし、それでも遅すぎる。

 緊急時の品目の決定権限を省令(施行令規則)まで落とす必要があります。法律をどのように書くのかは分かりませんが、総理大臣の指示あるいは閣議決定により省令改正するようにしないと、迅速な対応が難しそうです。

 現在の方法では、政令を改正するため、各省との協議が必要で、当然、様々な手続きに時間がかかり、直ぐに改正できるわけではありません。

 今回のマスク不足騒動、それに続くトイレットペーパー等の不足騒動は、1月末の中国人による買い占めに端を発しています。それにより、消費者がパニックになり、ニセ情報に惑わされた末、連鎖的に他の商品の不足に発展したと考えられます。

 結局、大量買い占めによりマスクの不足が顕著になった時点で、速やかに買い占めを阻止する仕組みを作らなければなりません。その意味で、今回の政令改正では全く不十分です。

 他の国がマスクの国外流出やネットでの高額販売を禁止したりして迅速な対応をしているのに、日本では、やっと3月15日施行の法令ができました、というのでは、対応が遅すぎると思います。

 法の第三条、第四条を見ると、今回のような中国人による買い占めで、その物資が国外に輸送されているという事態は想定していないようです。しかし、現実には、1月29日にブローカーに傭われた多くの買い子により買い占められた大量のマスクは、すぐさま、郵便局から中国へ郵送されたようです。この日、郵便局にはマスクを小包で送る中国人たちが列をなしていたと、どこかのニュースサイトに書いてありました。

 政府は、政令改正により、ネットで高値で売るためにマスクの買い占めを行ったブローカーは、安値でも在庫を放出して売れ残りを防ぐため、マスク不足は解消されると考えているようですが、そもそもそのマスクが既に日本国内にはないとは考えていないようです。個人のバイヤーが買い占められる量などたかが知れています。買い子まで動員するブローカーとは、資金的規模が比べものにならないほど小さい。

 このような動きを察知し、翌30日にマスク買い占め禁止に動き出せば、店頭でのマスク不足も起きなかったし、その後のトイレットペーパーが不足するようなパニック買いもなかった。

 しかし、現在の法律では、そのような迅速な対応はできない仕組みになっています。総理がいくら指示しても、法律がそのようにはできていないのです。

 法律はあるけど、特定商品の規制の指定には政令改正が必要で時間がかかる。迅速な対応は、現在の法律では不可能です。

  なお、特定商品の価格について、「標準価格」は主務大臣が内閣総理大臣に協議し、省令で設定できることになっています。(令第三条)  しかし、価格を抑えても商品がどんどん中国に郵送されてしまうのでは、むしろ、その動きを助長することになります。値上がりしないから、安値で仕入れることができるからです。

 ついでに、法第十一条に、「主務大臣は、特定品目の物資の販売をした者のその販売価格が当該販売をした物資に係る特定標準価格を超えていると認められるときは、その者に対し、当該販売価格と当該特定標準価格との差額に当該販売をした物資の数量を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。」との規定があります。1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科されるという罰則だけでなく、儲け分も国に取られてしまう仕組みです。特定品目に指定されればの話ですが。
 
 マスコミも、このような視点で報道してくれるとよいのですが、買い占めをしたバイヤーが政令改正で困ることになる、ざまあみろ、的なネット上の情報を流しているのですから、あまりのレベルの低さに呆れてしまいます。

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