ネット上で最も有名なのに名前も知られていない「404姉さん」の謎を追う

ディープ・プロファイリング

『404のお姉さん』のことをご存じでしょうか。インターネットの世界で最も知られている女性の一人とされています。ネットサーフィンをする人なら彼女の写真に一度や二度はお目にかかったことがあるでしょう。

しかし、彼女のことはほとんど知られていません。このリュックを背負った姿の写真しか見たことがないという方も多いと思います。そして、彼女が登場するのはリンク切れやドメインが売りに出されているサイトがほとんどです。サイトにたどり着けないときに表示される404エラー(”Not Found”(日本語では『未検出』または『見つかりません』))で表示される画面に彼女の写真がとても多く使われています。

ネット上では、「彼女は誰だ?」というスレッドがたくさんあります。しかし、記載してあるのはわずかな情報だけ。

この写真について「weblio辞書」に以下のように載っていました。やはりとても有名なようです。

「404ねーちゃん
読み方:よんまるよんねーちゃん
別表記:404姉ちゃん、404ねえちゃん、404姉さん

インターネットで、ドメインの有効期限切れにより「404エラー」が起こった際に表示されることが多い、リュックを背負って笑みを浮かべている外国人女性の俗称。世界的によく知られており、英語圏では「Parked Domain Girl(ドメイン切れの少女)」などの俗称で呼ばれている。彼女の名前はハンナといい、写真家のダスティン・ステラーの妹であることが判明している。 (「weblio辞書」)

彼女の写真は、パロディに使われたり、Tシャツに使われたりと、今もなお絶大な人気を誇っています。

彼女のことが少し気になったので、もう少し詳しく調べてみました。たぶん、本記事が世界中で一番詳しく彼女のことを紹介していると思います。英語版のさまざまなサイトよりも遙かに詳しくご紹介します。

アンケート調査によると、男性の76%は、リュック少女が好きなのだそうです。大きなリュックのせいで華奢に見えるという効果もあるらしい。シルエットがかわいい、初々しさがかわいい、アクティブな感じがかわいい、そもそも合理的など、肯定的な意見が大勢を占めます。

Parked Domain Girlとは誰?

彼女の名前は、ハンナ・ステラー(Hannah Steller)。米国ミズーリ州カンザスシティの生まれです。問題の写真撮影当時(2005年)は17歳くらいだったのではないでしょうか。すると、1988年生まれになり、現在、28歳になります。

ハンナは5人兄妹の真ん中で、長兄がダスティン・ステラー(Dustin Steller)。ハンナの写真を撮影したカメラマンです。

ダスティン・ステラーのサイト(”steller photography”)やflickr(”My Family“)、”iStock.: dsteller“、”Model Mayhem“などで、ハンナの写真がたくさん公開されています。関心のある方はリンクからご覧下さい。ハンナはとても魅力的な女性です。バックパック姿とはひと味違う写真がたくさんあります。

ハンナは、2009年に結婚しており、2010年3月にはニューヨークに在住。夫のカイル(Kyle)はシェフで、ハンナとの結婚後ハワイに引っ越しますが、後に彼女の生まれ故郷カンザスシティに戻ってきます。現在は不明です。

世界に売り出したいと思っている有名人願望の人もいるとは思いますが、売り出し方に問題があると良い結果にはなりません。

ハンナの場合は、世界中でとても有名にもかかわらず、その写真の使われ方が404エラーというサイト訪問者にとって期待外れの画面に使われていることから、訪問者は彼女に対してあまり良い印象を持たないようです。

兄のダスティン・ステラーは、カンザスシティで活動しているカメラマンで、ヌードの撮影は行わないことをポリシーとしており、結婚式などのアットホームな写真を多く手がけているようです。ダスティンの写真はとても暖かみを感じさせ、管理人は好きです。

ダスティンが写真家として最初のモデルにしたのが妹のハンナでした。この頃に撮したのが問題の写真のようです。2005年8月、彼は「iStockphoto」に当時高校生だった妹の写真をアップロードします。その写真を購入したのが「parked domain company」でした。この会社が関連するサイトでこの写真が大々的に使われ、拡散していくことになります。これが彼女の写真が”parked domain girl”と呼ばれるゆえんです。したがって、”parked domain girl”を直訳しても意味がないことが分かります。会社の名前なので。この写真のロイヤルティとして彼が手に入れたお金は、わずか60セントだったそうです。

他にもある一連の写真

このリュックを背負ったハンナの写真は1枚だけではなく、一連の写真が何枚か存在します。

管理人が見つけたのは下の14枚の写真です。この子、可愛いです。

撮影場所はどこか?

この写真が撮影された場所はカンザスシティのユニティ・ビレッジ(Unity Village, in the Kansas City)です。大学かと思ったのですが違いました。このビレッジ全体が宗教施設になっているようです。ダスティンも大学のキャンパスではありませんと書いています。背景奥に見える塔のような建物がユニティ・ビレッジ・タワー(Unity Village Tower)です。


 

Source: Google Street view

このユニティ・ビレッジ・タワーは、1927年に貯水タンクとして建造された建物です。

当時、この村は水不足で苦しんでいました。井戸を掘れば、出てくるのは石油とガスだけという状況でした。そこで、ダムを造り、その貯水湖から水を引くことになりました。問題は、ダムから引いた水をどうやって配水するかということでした。そこで、ダム取水位置との高低差50mを活かした貯水タンクを建造することになりました。その2年後の1929年、高さ50mのユニティ・ビレッジ・タワーが完成します。タワーの中には、郵便局、信用組合やテレビ・ラジオ局などのオフィスが置かれました。

2011年に大規模な補強・改修工事が行われきれいに整備されました。アメリカ合衆国国家歴史登録財(National Register of Historic Places)に登録されている歴史的な建造物です。

そもそもユニティ・ビレッジって何だろう?

ところで、そもそもユニティ・ビレッジって何だろう? という疑問が湧いてきました。ここはとてもきれいな場所です。写真の撮影場所としても最適な環境にあると思います。

そこで、さらに深追いしてみます。

1889年、チャールズ・フィルモア(Charles Fillmore)とその妻マートル・フィルモア(Myrtle Fillmore)がユニティ教会を創建しています。神秘的精神活動により彼が子供の頃に負った怪我のために不自由だった足が治ったことや、妻の結核が完治したことなどが大きく影響したようです。

1919年、彼らはカンザス・シティに55エーカーの土地を購入しました。そこを宗教活動の拠点とします。それがユニティ・ビレッジです。

彼らには二人の息子がいました。ローウェル・ペイジ・フィルモア(Lowell Page Fillmore)とウォルド・リッカート・フィルモア(Waldo Rickert Fillmore)です。タワーの計画を遂行したのは、次男のリカートのようです。

この場所については、下の動画がよくまとまっていると思います。

Youtube: Unity Village – A Celebration & History

404の娘さんを追いかけるうちに、ユニティなる宗教団体にたどり着きました。この団体のことは日本ではほとんど知られていませんが、ハワイで挙式する時、よく使われる教会がユニティ教会です。

あとがき

全くの余談ですが、ハンナのことを追い求めて丸一日を費やしました。彼女の情報がほとんどないため、この記事をまとめるのにかなり手間取りました。ネット上にある彼女の写真はほぼすべて見たと思います。そこで感じたのが、以前ご紹介したユーチューバーとして活躍しているアメリカの女性バイオリニスト、テイラー・デイビス(Taylor Davis)と容姿がとてもよく似ているということ。

Hannah Steller

テイラーは、ハンナの生まれたミズーリ州の隣のイリノイ州ウェスタン・スプリングスの生まれです。どちらの女性も背が低く、がっちりした体格で、顔つきも女性としてはゴツい感じがします。

テイラーは1987年生まれなので、ハンナと同じくらいの年齢です。

アメリカの田舎娘にはこのような顔つき、体つきの子がたくさんいるのでしょう。美人かどうかはともかくとして、管理人としては、テイラーもハンナも好みのタイプかも。好みの範囲がとても広いので。二人は意外に親戚だったりして。

【References】

steller photography
Letter: Dustin Steller to Parker
Quora
Unity Village
Unity, History of Unity
iStock-Hannah Steller