呪われた島 オーク・アイランドと財宝の謎

 「オーク・アイランドの財宝伝説」をご存じでしょうか。

  カナダの東海岸、ノバスコシア州チェスターにあるオーク・アイランド(オーク島、Oak Island)に隠されているとされる海賊の財宝伝説です。

 日本人にはなじみのない島ですが、「赤毛のアン」の舞台となったプリンスエドワード島の南西200kmに位置しています。車で4時間くらいの距離にあります。

 オーク・アイランドはとても小さな島で、面積は57ha。一辺が755mの正方形に収まる大きさです。神奈川県湘南の江ノ島が38haなので、オーク・アイランドはちょうど1.5倍の大きさです。

 この島は陸地から200mほど離れた場所にあり、海抜標高は最大で11mです。この周辺には360あまりの小さな島があります。


     Source: Google Mapより作成。島のスペルを間違えました。Ork ⇒Oakが正しい。

 オーク・アイランドは、個人所有の島です。陸地からは道路が通っていますが、ゲートで封鎖されていて中に入ることはできません。


   Source: Google Earth

呪われた島 オーク・アイランドと財宝の謎

 ヒストリーチャネルのリアリティーTVシリーズで、『オーク・アイランドの呪い(The Curse of Oak Island)』という番組が2014年1月5日から米国で公開されています。

 番組では、220年にわたるオーク・アイランドにまつわるミステリーを解明するため、米国ミシガン州からやってきた二人の兄弟ラギーナが、全世界の専門家の意見を聞きながら、最新のテクノロジーを使い、オーク・アイランドに埋められたとされる財宝を見つけ出そうとする奮闘を描いています。2015年11月10日には、シーズン3がスタートしました。そして、2016年11月15日にはシーズン4がスタート。このシリーズはヒストリーチャネルの中でも人気のあるシリーズのようです。

 まさに、世界を巻き込んだ今が旬の宝探しです。

 ヒストリーチャネルの番組の宣伝には以下のように書かれています。

 「ノバスコシア沖の謎めいた小さな島で、夜間に奇妙な明かりが目撃され、その調査のために乗り込んだ人々が行方不明になった。数人の子供たちが、奇妙な刻印がされた地面を見つける。オーク・アイランドの地下には一体何が埋められているのだろうか。海賊の財宝、もしくは失われた契約の箱・・・。それは誰にも分からない。そしてこの謎を解こうとした者には必ず予期せぬ問題が立ちはだかった。地面を数フィート掘ると、すぐに海水が溢れ出して掘った穴をふさいでしまう。何者かが、とてつもない労力を費やしてそれを隠したのだ。
 この秘密の解明に執念を燃やしている石油業者のマーティは、巨額を投じてその島へのアクセス権を買収した。彼らはこれまで使われたことのない技術を駆使して発掘作業に挑む。もちろん彼らの前にも困難が立ちはだかった。この島は呪われていると代々伝えられ、昔から「財宝が見つかるまでに7人が死ぬ」と予言されているのだ。」

オーク・アイランドの財宝伝説とは

 オーク・アイランドの財宝伝説について、簡単におさらいしておきましょう。事の発端は、1795年、今から220年前に遡ります。

 1795年、三人の少年たちが一世紀ほど前に掘られたと思われる古い縦坑を発見します。見つけたときにはくぼみ程度でしたが、近くのオークの木には滑車がかけられた跡があることなどから、縦坑を埋めた跡だと考えた少年たちはどんどん掘り進め、30フィート(9m)の深さに達します。10フィートごとにオーク材の丸太が穴に敷き詰められていました。彼らはこれ以上掘り進めることをあきらめます。

 1803年、彼らは掘削を再開しました。この時は90フィート(27.5m)まで掘り進みます。そこで、謎の文字が刻まれた石版を見つけます。そして、この石版を外して直ぐに穴に水が浸入し始め、穴は水没してしまいます。後にこの石版を解読したところ、40フィート下に二百万ポンドを埋めたと書かれていることが分かりました。


 発見された石版のレプリカ。”Forty feet below, two million pounds are buried.”と書かれている・・・らしい。

 この後、何人ものトレジャーハンターたちが宝探しに挑戦しますが、誰一人成果をあげることができていません。

 この財宝伝説についての詳細は、こちらのサイト『オーク・アイランドの埋蔵金』がよくまとめられています。

財宝は本当にあるのか

 最初にこの財宝伝説を知ったとき、「筋の悪い話」だと思いました。どうもうさんくさい話です。

 そもそも、初期の状況説明はでたらめばかりが一人歩きしています。最初に掘削したのは三人の少年ではなく、土地の所有者ら三人の成人男性でした。

 上記のサイトでも書いているように、自然の地形・地質のいたずらのように思えます。

 この島の基礎岩盤である石灰岩質の地質では、長い年月の間に岩盤が水で浸食され、空洞ができ、陥没が起きます。その繰り返しで、亀裂の多い岩盤の浸食が進むと陥没が起き、地面に生えていた樹木が地中に埋没するという現象が定期的に起きるような場所なのではないかと思います。

 財宝探しには資金が必要になります。発掘を続けるためには、パトロンを見つけ、定期的に一定の「成果」をあげる必要があります。オーク・アイランドの財宝発掘では、埋蔵金があるというたくさんの証拠があるにも関わらず、それらのすべてがまともな証拠ではないのが特徴です。

 例えば、見つかった石版は、今、どこにあるのでしょうか。石版のレプリカでは文字らしき記号が二行で書かれていますが、オリジナルのスケッチには4行で描かれています。

 引き上げたスクリューオーガーに付いていたという金の鎖はどこにあるのでしょうか。失われたようです。決定的な証拠のオリジナルはどこに行ったのか分からない。紛失あるいは盗難に遭ったため現物はない! どうも、ねつ造疑惑の臭いがぷんぷん漂ってきます。

 そもそも、少年たちが窪地を見つけた1795年にはカメラがありませんでした。最初の写真が撮影されたとされるのは1825年になってからです。Money Pitを30フィート掘る毎にオーク材がまるで足場のように敷き詰められていたとされていますが、それが真実だという証拠は何もありません。

 「オーク・アイランドの埋蔵金伝説」が筋悪なのは、そもそも財宝伝説などなかったのに、あとで作り出したことです。だから、キャプテンキッドの財宝やバイキングの財宝などたくさんの候補が挙げられていて、何が埋まっているのかさえ誰も知らずに必死で探している状態です。

 これが「ココ島の財宝」と大きく異なる点です。ココ島の財宝は文書で確認できる財宝が隠されたとされています。

<追記> RationalWikiの”Oak Island Money Pit“の項を読んでいたら、ココ島との文脈で同じことが書かれていました。また、全体の主張が本記事とそっくりなのでビックリ。管理人がマネして書いた訳ではありません。RationalWikiの記事を読んだのは今回が初めてなので。<追記 終わり>

 「オーク・アイランドの埋蔵金伝説」は、財宝を探すのではなく、自然現象である証拠を探した方が、良い結果が得られると思います。

 この財宝探しが奇妙なのは、下の画像を見れば分かります。

 冒頭に書いたように、この島はとても小さく平坦です。海抜標高は、高いところでも11mしかありません。写真の矢印の部分が “Money pit”と呼ばれる、少年たちが最初に掘った場所です。つまり、この宝探しの舞台です。写真から分かるのは、こんなに海の近くの地面を掘り返したら、必ず海水が入ってくるということ。

 ”Money pit”部分の海抜標高は5mもないのではないでしょうか。こんな所を30mも掘り下げたら、土の亀裂から海水が浸入します。少年たちが支保工なしの素掘りで9mもの深さまで掘ることができたのは、この土質が粘土だからだと思います。青色粘土と書いてある記事もありました。

 管理人の想像では、海面下24m付近の土層に水平方向の大きな亀裂があるように思います。だから、島のどこで掘っても、(地面標高4mとして)28m付近で海水が噴き出します。ある深さで水が浸入するように作った「設計者」がいたわけではありません。

 ある資料では、基礎岩盤の深さは160フィート(49m)と書いています。基礎岩盤は石灰岩でできており、いくつかの空洞が確認されています。

ヒストリーチャンネルのラギーナ兄弟の方法では見つからない

 ヒストリーチャンネルの「呪われた島 オーク・アイランドと財宝の謎」という番組を観ました。シーズン3まで観ましたが、いつものようにヒストリーチャンネルの番組作りには閉口します。

 この番組を観て管理人が感じたのは以下の通りです。

 ラギーナ兄弟は、様々な仮説を排除せず、その真偽を検証しようとしている、ように感じます。しかし、そんなことをしていては、費用がかさみ、時間ばかりかかります。

 テンプル騎士団や海賊の財宝など様々な説が登場しますが、そもそも論の部分がなおざりにされていると感じます。

 なぜ、オーク・アイランドなのか、という素朴な疑問です。

 周辺には360あまりの島があります。その中で、財宝を隠す場所としてオーク・アイランドが選ばれた理由を、まずは始めに調べるべき、考えるべきです。

 オーク・アイランドには港として使える入り江はありません。そんな島には、昔の木造帆船は怖くて近づかない。いつ、座礁するか分からないからです。

 島の地下70mもの深さに宝物を埋蔵するなど、少し考えればあり得ないことが分かります。

 地下深くに埋蔵するなどの大規模な土木工事をするには、数百人の労働者が長期間にわたりこの島に滞在する必要がありますが、この島には飲み水すらありません。

 ファラオの墓を造っている分けではない。埋蔵のための工事にかけることのできる期間は、最大でも1年程度でしょう。この短い期間に掘削できるトンネルの深さなどたかが知れています。

 宝物を埋蔵したトンネルでもし出水事故でも起きれば、その水をくみ出す手段は(当時)存在しません。小さな島で、大深度地下トンネルを掘削することは現実的ではないのです。

 ラギーナ兄弟の宝探しが奇妙な点は、まるで靴の上から足を掻くような回りくどい方法を採っていること。

 たとえば、財宝の盗掘を防ぐために海水が流入する仕掛けが施されている。その取水口がスミス・コープ(Smiths Cove)と呼ばれる浜辺に設置された五つの取水口とされる施設。


 Image: ヒストリーチャンネル

 番組では、ここを スコップで掘り 、椰子の繊維などを採取し、年代測定をしています。そして、その結果に一喜一憂している。とても滑稽です。

 なぜ、機械を使って取水口とされる施設の存在を確認しないのか。それが確認できるだけで、何らかの財宝を隠すための施設を造ったという明確な証拠を確認できるのに。

 重機を使うのは島の内陸の部分だけ。覆工板くらい用意しろよと思えるほど、仮設工事には無頓着。足場が悪いと機械を動かせないらしい。

 まるで、番組を長く続けるために、わざと回りくどい方法を採っているように見えます。

財宝を埋蔵したのがいつの時代かは不明としても、はっきりしていることがあります。それは、「当時の技術では水中掘削は不可能なこと」。さらに、ポンプがない時代に、海面より下にある地下10メートルより下にある水を抜くことはできないこと。海水の浸入より速く排水できるポンプがなければ、水抜きは不可能です。

 盗掘防止のために海水が流入する仕掛けを造ったとしても、財宝を掘り出すとき、その水を抜く方法は存在しません。山の上のトンネルならばいくつか方法は考えられますが、海面下のトンネルの水を抜くなど、不可能でしょう。そもそも、止水自体が難しい。

 番組ではトウモロコシを使って止水するなどの説を最もらしいアニメーションで説明していましたが、そんな方法で止水できるのなら、やってみろよ。

古代の遺跡がなぜ土中に埋没しているのか、理由を知っていますか?

 古代の遺跡は、「発掘」により確認されます。つまり、土中から掘り出すのです。

 では、いったい、誰が埋めたのでしょうか? これは長い間分からず、謎でした。多くの遺跡が土中に埋もれています。もちろん、意図的に土をかぶせて埋めたものもありますが、それは少数です。大多数は、年月の経過とともに土中に埋没していきます。

 ところが、マヤの遺跡は、ジャングルの中から発見されました。土中に埋没していたわけではありません。この違いは何なのでしょうか。

 実は、この謎を解明した人物をあなたは知っています。進化論で有名なチャールズ・ダーウィン(1809 – 1882)です。

 古代の遺跡を土中に埋めているのは「ミミズ」であることを突き止めたのがダーウィンです。
 
世界一周の航海からイングランドに戻ったダーウィンは、ミミズが土を耕し、土を運び上げることで、遺跡が地中に埋もれていくメカニズムを明らかにしました。しかし、その速度は年に1cmから2.5cmととてもゆっくりとしたものです。

 では、マヤの遺跡が土中に埋もれなかった理由は何だったのでしょうか。

 それは、ミミズが少ないからです。熱帯地域は植物が生い茂り、落葉して、そこの土は栄養に富んでいると思いがちですが、実は違います。熱帯の土はとてもやせていて、栄養分を含んでいないのです。その理由は、高温多湿による有機物の分解の早さにあります。このため、一度、自然の再生サイクルが崩壊すると修復できないという、とても恐ろしい状況を生み出します。熱帯の自然体系はとても壊れやすいという特質があります。

 熱帯地域の遺跡が土中に埋もれないのは、落ち葉などの有機物を餌にして活動するミミズにとって、厳しい環境だということです。

 オーク・アイランドはもちろん熱帯ではありませんが、とても平坦な小さな島で海に囲まれています。このような島では、土壌は日常的に塩水をかぶっている状態であるため、耐塩性の植物しか生えません。ミミズの生育環境としては最悪です。最初は、地中で見つかったオーク材について、ミミズによる埋没かと思ったのですが、ミミズの生育環境として劣悪であることから、石灰基礎岩盤の陥没によるものだと考えました。この島では、ミミズは関係ありません。

 ダーウィンは、肩書きとして「地質学者」を自称していました。オーク・アイランドの財宝についてネットで調べると、地質学者が参加していないように思います。柱状図が見当たらない。ピットの断面図と深さごとに何が出土したかという図はありますが、地質については何も書かれていません。

 最後にもう一点指摘しておきます。「設計者が海水がピットに入るように設計した」とします。では、財宝を隠匿した人物が必要になって自分たちが掘り出すとき、どうするのでしょうか。盗掘者が掘ったために、ピットは海水で満たされています。しかし、”設計者”は、この水を汲み出すことはできないのです。

 紀元前からあった吸い込み式のポンプでは水を汲み出すことのできる深さ、つまり揚程は10mが限界です。押し出し式のポンプでは揚程100m以上、200mでも可能ですが、当時はそのようなポンプはなかった。水中ポンプが発明されたのは、1948年になってからです。

 これが、管理人が「筋悪」と考える主な理由です。

 伝説を否定するような記事を一所懸命書いてもつまらないのでこの辺で終わりにします。

 ヒストリーチャネルにおけるオーク・アイランドのシリーズの作り方は、かなり問題があると思います。ノンフィクションなのは、現在探しているシーンだけで、残りの映像は虚構。結局中身がないから、ねつ造しているように感じてしまいます。問題なのは、それをあたかも真実であるかのように映像内に組み込んでいること。ヒストリーチャネルもこんな低レベルな番組を作るんだ!と驚いてしまいます。

参考:
1. Wikipedia, Oak Island mystery