「魏志倭人伝の謎にマンガで突っ込みを入れてみた」シリーズの第四弾。
この漫画シリーズは、作っている管理人自身がいろいろ考えさせられます。
管理人が感じた素朴な疑問を漫画にしていますが、通常は思いつかないようなひらめきがあるから不思議です。
前回の「卑弥呼=シャーマン説」を根底から覆す逆転の発想は、通常の思考からは生まれなかったと思います。
漫画というツールが優れているのは、視覚的ツールのため、キャラクターのちょっとした動きや発言で無限に想像力が拡張すること。
卑弥呼に「ちっ」と舌打ちさせるだけで、卑弥呼の内面・心情、相手に対する印象、その後の行動など、想像範囲が広がります。これが視覚化の威力なのでしょうか。
卑弥呼はかなりの長寿を全うしたようです。
すると気になるのは、現代社会と共通する「老い」にまつわるトラブル。
介護で問題になるのは、介護対象者が権力を持っている場合です。
要介護者は、自分の老化を認識できないから問題が深刻化します。
「ぼけ老人」と笑っていられるのは、要介護者が権力を持っていない場合です。もし、要介護者が接するすべての人間の「生殺与奪の権利」を持っていたらどうでしょう。とても恐ろしいことになります。
倭人伝には「人は長命であり、百歳や九十、八十歳の者もいる」と書かれていますが、これを議論する前提は、倭国で暦が使われていたということ。暦もないのに、年齢だけは分かるとはおかしなこと。100歳の老人は、自分が何歳か分かりません。周囲の人がおじいちゃんは今年100歳だよ、などと毎年年齢を教え続けなければなりません。ところが、周囲の人の方がバタバタと死んでいく。これでは、年齢を数え、覚えているのは難しい。やはり、歴が必要でしょう。歴がなかったとすれば、「百歳、八、九十歳」という数字は完全な憶測に過ぎず、本当は40歳かもしれません。
管理人が気になっているのは卑弥呼の後を継ぐ形になった「壹与」のこと。わずか13歳で女王に即位。一説には、平均寿命は20代。わずか20数歳で死を迎えていたとされます。13歳の壹与に残された寿命は長くて10年。化け物のように長寿だった卑弥呼は例外でしょう。
そんな状況に置かれたら、人間、やることは決まっています。楽しくやって一生を終える。そんな人生観が、当時一般的だったのではないでしょうか。
日本人の平均寿命が世界でトップクラスになったのは、食生活の改善が主要因です。明治以降、男性の平均寿命は43歳程度で横ばい状態でした。
倭国に長寿の人がいると、おおよそ2000文字で書かれた倭人伝で特筆されるほど「一部の人」は長寿でした。しかし、一般人の栄養状態は現在と比較して良いとは思われません。20代、長くて30代で一生を終えていたのでしょう。
邪馬台国で卑弥呼に仕えた千人の侍女たち。卑弥呼が亡くなるとき、最初から仕えていた女官など一人もいなかった。女官の娘ですら死んでおり、孫の代になっていた可能性もあります。
映像的には、「卑弥呼に従う千人の女官たち・・・、彼女たちのほとんど全員がこの後数年で亡くなります」、という感じでしょう。