『森鴎外の「帝都地図」』を読む

古代の謎・歴史ヒストリー

 ジャーナリストの秋庭俊氏が書いた『森鴎外の「帝都地図」』を図書館で見つけて読んでみました。

 森鴎外が作った地図に東京の地下網が暗号で記載されているという内容です。

 個人的にはとても面白かったのですが、ネットで見ると、辛辣なコメントが多数あります。これほど多くの批判は珍しいことかと思います。

 それらのコメントの基本的な部分は、筆者が信用できないというものだと感じました。

 朝日新聞社の記者だったという経歴が、反感を買っている要因のようです。

 これらのコメントに同調するとすれば、秋庭氏の文章はあまり上手ではない。最初に鴎外の地図を見せられたときの記述が不自然で、脚色させているとの指摘があります。

 仮にも、元朝日新聞の記者であることを明らかにして本を出版しているのなら、ウソは決して書いてはならない。(朝日新聞の元記者だからこそ、ウソを平気で書く、というのがネット民の感覚なのでしょう)。

 この程度のウソなら、と思って書いているらしいところをネットで指摘されているのかなぁと、思いました。でも実際は、ネットで指摘されている点は実は微細なことで、本の論旨を覆すには至っていません。

 最初に、この本については、批判する人が結構いるということをご紹介しました。

 さわさりながら、この本は、個人的には良い本だと思いました。

 それは、
  ・森鴎外の地図など聞いたこともなかった情報を提示し、その詳細が分かったこと
  ・鴎外の書いた「青年」を読み解く新たな視点を提示していること
  ・森鴎外の地図の解釈の仕方の一つを提示していること
  ・オランダ式城塞、イギリス式城塞築造方式についての情報を提示していること

 管理人にとっては、これらの情報をこの一冊で得られただけで大満足です。

 これだけの情報を提供しながら批判される著者はかわいそうです。

 理解できなかったのは、砲台が城内に向けられて設置されるという記述。敵に城内に攻め込まれたら敵味方入り交えた白兵戦になります。こんな中に砲弾を打ち込むはずがない。ありえない。この砲台配置の記述が何度も出てくるので気になりました。誤訳では?

 先日読んだ『サイモン・シン著「暗号解読」』と重ね合わせると、この書籍の暗号解読は単なる思いつきという感じもします。しかし、「思いつき」や「ひらめき」こそが重要です。この本の著者は、「思いつき」や「ひらめき」を発展させ、展開し表現する方法を誤ったのかなぁと思います。

 でも、この本は面白いです。漱石、鴎外愛読者などなら楽しめると思います。何しろ、あの「森鴎外」ですから。わくわくします。

 ぜひ、ご一読を。管理人、おすすめの一冊です。
 管理人が夏目漱石のお墓参りをした記事はこちらから。

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