地形の微少な変化を知りたいとき、10メートルコンターでは難しいときがあります。できれば、1メートルコンターで調べたい。しかも、Google Earthに1mコンター等高線を表示させたい。
国土地理院が、最新の航空レーザ測量データを基に作成した基盤地図情報(数値標高モデル)1mメッシュ(標高)の提供を2023年11月30日(木)に開始しました。解像度は1mであり、詳細な地形の起伏が表現されているため、浸水被害予測など、様々なシミュレーションで活用できるようです。
まあ、それは良いのですが、提供されたデータをどうやってGoogle Earthで使うかなんて、どこにも書かれていない。
実はこれが結構面倒くさい。国土地理院の提供する今回のデータは、xml形式。これをtifに変換し、これを更に、Google Earthが読めるkmlに変換するという作業が必要となります。国土地理院では、一部のファイルはkmlで配布していますが、今回のファイルではそのサービスがないので、自分で変換することになります。
適当にやってできるものではないので、手順を詳しく書きます。ただし、今回の目的以外の部分については一切書きません。全て無料でできます。
1. 基盤地図情報(数値標高モデル)1mメッシュ(標高)のダウンロード
必要なファイルは、「基盤地図情報ダウンロードサービス」にアクセスしてダウンロードの手続きをします。
ユーザー登録
ダウンロードにはユーザー登録が必要です。開いた画面の中程にユーザー登録のリンクがあるのでそこで登録します。ちょっと変な登録方法なので、注意が必要です。
1. 最初にフォームに従い、メールアドレスと任意のパスワードを入力して仮登録します。
2. 登録したアドレスにメールが届くので、そのリンクをクリックして本登録完了です。
3. ここで一手間あります。ログインするには、先ほど入力したパスワードとユーザーIDが必要です。一般的なネットサービスではメールアドレスがそのままユーザーIDになると思いますが、今回のケースでは、ユーザーIDが本登録後に送られてくるという仕様になっています。これって、本当に紛らわしい。
ユーザーIDが送られてきたら、それを使ってログインします。
次に、ファイルのダウンロードです。
ファイルのダウンロード
先ほど開いたページの「基盤地図情報 数値標高モデル」をクリック。

すると以下のウインドウが開きます。
以下の手順で必要なファイルを絞り込んでいきます。この後、二段階の変換作業があるので、本当に必要な範囲のみ選択していきます。とてもサイズの大きなファイルなので、無駄なDLは止めた方がよいでしょう。

① 「最新データを検索(メッシュ単位)」を選択
② 「1mメッシュ」にチェックを入れる。
③ 「県」、「市町村」と絞り込んでいく。
④ 「検索結果リストに追加」ボタンをクリックすると、右の「検索結果リスト」が表示される。
⑤ 上のメッシュ図で最低限のダウンロード範囲を決める。
⑥ メッシュ番号に該当するファイルのみ「追加」ボタンをクリックする。「削除」と表示されているのが選択された状態。
⑦ DL範囲に間違いないことを確認したら、「ダウンロートリスト」をクリック。
⑧ すると、左下に「ダウンロード等へ」というボタンが表示されるので、クリック。ダウンロードページが開きます。
確認して「ダウンロード」ボタンをクリックし、ダウンロードします。

基盤地図情報の複製・使用申請が必要な方は、表示されたリンクから手続きしてください。
ダウンロードしたファイルは、(今回の例では)「FG-GML-513576-DEM1A-20240719.zip」のような名前になります。新規にフォルダを作り、そこでzipファイルを解凍すると「FG-GML-5135-76 xml」という名のフォルダがつくられます。その中にはたくさんのファイルがあります。
xml ⇒ tif 変換
次に、ダウンロードしたxmlファイルをtifファイルに変換します。
先ず、「基盤地図情報 標高DEMデータ変換ツール」をダウンロードします。
「demtool_v1_7_1.zip」というファイルがダウンロードされるので、これを先ほどつくったフォルダに入れ解凍します。すると、「基盤地図情報標高DEM変換ツール」というフォルダができます。この中の[変換結合.vbs]をダブルクリックして起動します。
セキュリティ警告、ファイルの混在警告が出ますが、[開く]、[OK]を押してそのまま進みます。
次に、「投影法を選択してください。」というウインドウが開くので、そのまま「OK」。
次に、「陰影起伏図を作成しますか?」と聞かれるので、必要なら「はい」をクリック。
次に、「JPGIS(GML形式)の入っているフォルダを選択してください。」と表示されるので、先ほどの「FG-GML-5135-76 xml」フォルダを選択して[OK]。
「海域の標高を選択してください」というウインドウが開くので、そのまま「OK」。
「変換作業を開始します。メッセージが出るまでお待ちください。」というメッセージが表示されるので、[OK]。
5秒程度で「変換が終了しました。」というメッセージが表示されます。
tifに変換されたファイルは、先ほどの「FG-GML-5135-76 xml」フォルダの中に入っています。たくさんあるtifファイルの中で、次の作業で使うのは、「merge.tif」というファイルだけ。これは、個別のtifファイルを結合したものです。
tifファイルをkmlファイルに変換する
次にtifファイルをGoogle Earthで読み込めるkml形式に変換します。
使うのは「QGIS」というソフトです。QGIS公式サイトからダウンロードします。
開いたサイトの右側にある「Skip it and go to download」をクリック。
開いたページで、オンラインとオフラインという二種類のファイルを選択できます。ここでは、オフラインを選択しました。
ただし、このソフトは2.92GBの大きなサイズなので、オンラインの方が良いかも知れません。

単にこのソフトの変換機能を使ってkmlに変換するだけなので、最新バージョンにこだわる必要はないと思いますが、一応、最新版をダウンロードします。
ソフトをダウンロードすると、「QGIS-OSGeo4W-3.42.3.msi」というインストールファイルが保存されます。これをダブルクリックしてインストールします。
インストールが完了すると、デスクトップに「QGIS 3.42.3」というフォルダがつくられ、中にはショートカットが入っています。この中の「QGIS Desktop 3.42.3」というショートカットをクリックしてソフトを起動します。
手順は以下の通り。開いた画面の左ペインにある「レイヤ」の部分に、「merge.tif」をドロップします。
1. QGISを起動
2. 左下の[レイヤ]にmerge.tifをドロップ。
3.ドロップしたファイル名mergeをクリック
すると上のツールバーがアクティブになる。
4.ツールバーの[ラスタ] ⇒ [Extraction] ⇒ [等高線]
5.[ラスタ抽出-等高線]ウインドウが開くので、[等高線の間隔]を1.000000に変更。[横三角パラメータ]の下の等高線右の・・・で一時ファイルの名前と場所を指定。
6.実行
7. 処理が終了すると[完了]と表示される。 ⇒ [閉じる]
処理が終わると、[レイヤ]にファイル名が表示されるので、これを右クリック
処理が終わると、[追加するアイテムを選択]ウインドウが開く。ここに保存されたkmlファイルの場所が表示される。 ⇒ [レイヤを追加]。
変換されたkmlファイルは「ドキュメント」フォルダに保存されていると思います。
Google Earthにkmlファイルを読み込む
Google Earthで[開く] ⇒ 保存されたkmlファイルを選択 ⇒ 「ドキュメント」に保存されたkmlを選択し開く。
作業は以上で終了です。kmlファイルを造ることが目的のため、途中過程で生成したファイルは全て削除しても問題ありません。
1mコンターで表示すると、下のようになります。
黄緑のレイヤーは、奈良県天理市の石上山の凝灰質細粒砂岩-泥岩からなる「豊田累層(Fm)」です。管理人が何をしようとしているのかは、「狂心渠」に関心のある方はすぐに分かると思います。

単に1mコンターで表示するだけなら簡単
1mコンターで表示するのが目的なら、下のサイト(全国Q地図MapLibre版)を使えば地形図を1mコンターで表示できます。
しかし、この地図は、等高線が細かいだけで、地形図自体の精度が劣ります。それでは何の意味もない。今回管理人が必要だったのは、非常に詳細なレーザー測量の成果でした。しかも、地層レイヤーや他のレイヤーと重ね合わせることで、1メートル精度での検討がしたかった。

この分析結果は近日中にYouTubeにアップする予定です。
陰影起伏図はGoogle Earthに表示可能
上の説明の中で「陰影起伏図を作成しますか?」という部分があり、この時、「はい」を選択すると「merge_shade.tif」というファイルが生成されます。このファイルはGoogle Earthに直接表示することが可能です。
[ファイル] ⇒ [インポート]で読み込めます。ただし、下のようなメッセージが表示されます。今回、表示したい部分はとても限定的だったため、下画面の[切り取り]を選択し、次の画面で表示したい場所の中心をクリックすると、うまく切り取りできました。

