地震予報はできるらしい|最新情報

役立つ知識

 ここ数年、異常気象による災害が猛威を振るっていますが、地震も多くなったと感じませんか。

 今日は、いつ起きるかも知れない巨大地震について考えてみました。

巨大地震が頻発している?

 平成になってからの巨大地震をざっとピックアップしてみると、以下のようになります。これを見ると、日本中、至る所で大きな地震が起きており、その発生間隔が短くなっているように見えます。

 平成 5年(1993年)7月12日 北海道南西沖地震(奥尻島地震)(M7.8、震度6強)
 平成 7年(1995年) 1月17日 阪神・淡路大震災(M7.3、震度7)
 平成16年(2004年)10月23日 新潟県中越地震 (M6.8、震度7)
 平成19年(2007年)7月16日 新潟県中越沖地震(M6.8、震度6強)
 平成20年(2008年)6月14日 岩手・宮城内陸地震(M7.2、震度6強)
 平成23年(2011年)3月11日 東日本大震災(M9.0、震度7)
 平成23年(2011年)3月12日 長野県北部地震(M6.7、震度6強)
 平成23年(2011年)4月 7日 宮城沖 (M7.4、震度6強)
 平成28年(2016年)4月14日、15日、16日 熊本地震(M7.3、震度7)
 平成30年(2018年)9月 6日 北海道胆振東部地震(M6.7、震度7)
 令和 1年(2019年)6月18日 山形県沖(M6.7、震度6強)

 昭和の頃は、震度5と言えば大きな地震という印象でしたが、平成に入ってから、震度6強や震度7の地震が度々発生しています。

地震を恐れる心理と地震予知

 地震大国日本に住む我々が地震を恐れる理由は何なのでしょうか。

 巨大地震が発生し、過去の記録が塗り替えられるたびに、過去の最大の地震をベースとした各種設計基準が改正されます。

 このため、最近建てられた構造物であれば、建物が崩壊するような被害を受けることはほとんどないと考えられます。基準改正前に建てられた構造物でも耐震補強が施されていれば、安心して構造物の中に避難できます。頑丈な建物の中の方が、何が落ちてくるか分からない路上にいるよりは安全です。

 我々が地震を恐れる心理とはいったい何なのでしょうか。それは、地震がいつ起きるか分からないこと、どの程度の大きさの地震になるのか分からないこと、さらに、地震が発生すると、それがいつまで続くのかも分からないことにあるように思います。

 今経験した地震は、本震なのか、あるいは余震であり、さらに大きな地震が来る恐れがあるのか。もし余震だとすると、本震はいつ来るのか。

 これこそが我々の知りたいことでしょう。

 避難場所に指定されている体育館にエアコンを設置しろ、などとどこかの政党が点数稼ぎの主張をしています。エアコンを設置するのは簡単ですが、それを未来永劫、維持していかなければならない。その費用は誰が負担するというのでしょうか。

 我々が最も知りたいのは、巨大地震はいつ起きるのかということ。それに比べたら、あらゆる防災予算の優先度は落ちます。

 地震による犠牲者を最小限にするには、 この地震予知の精度を高めること が最も重要な事項であることは、誰でも分かることです。この課題を放置して、他の対策を進めるなど、全くのナンセンス。

 災害被災予測や避難路の確保など、それはそれで重要でしょうが、いつ起きるかも分からない巨大地震に備えるには、無限の予算が必要となります。施設・設備などのインフラを造ると、それを維持・更新するのに莫大な予算がかかります。そして、それは未来永劫、支出を続けなければなりません。

 つまり、これらの対策はエンドレスに続けていかなければならない。年間1千億円以上の国家予算を湯水のように使って、地震対策をしていますが、もし、これが予算ゼロでも誰も困らない。それよりも、今困ってい生活困難者のために使うとか、必ず来る巨大地震の復興費として積み立てておく方が、よほど効果的・効率的です。

 ところで、政府の地震予知はどうなっているのでしょうか。

 実は、地震予知はムリ、と諦めているようです。何しろ、日本地震学会が諦めているのですから、素人の政府にはどうしようもありません。

 地震の短期予知を研究している研究者もほとんど皆無の状態のようです。

質問:地震予知に対する地震学会の立場を教えてください。

回答:現時点で、地震予知(警報につながるほど確度の高い地震予測)を行うのは非常に困難であると考えています。科学的に検証され、確立された地震予知手法はまだないという立場です。ただし、将来的に地震予知はできないとの意見を表明しているものではありません。地震学会としては、引き続き、地震予知研究を行う研究者達の議論や意見交換を行える場を提供します。
地震予知に対する地震学会の立場(2015年9月修正)、日本地震学会

地震予知をあきらめた地震大国日本

 甚大な被害をもたらす大地震。その被害を防ぐために社会から求められているのが地震の発生を予測する地震予知。しかしこの試みは未だ実現されていません。

 研究者が地震予知を諦めたのには次のような背景がありました。

 地震予知の研究は、高度成長期の1960年代に始まります。国家の威信をかけた数十年にわたるこの計画には、膨大な国家予算が投入されました。全国にたくさんの観測機器を設置して、そのデータから地震発生の予兆を探ろうとする研究が行われてきました。

 しかし、1995年に発生した阪神・淡路大震災、2012年に発生した東日本大震災などを予測することはできませんでした。莫大な予算を使って観測網を整備してきたのに、地震発生の予兆すら感知できなかったのです。これは地震学の敗北であり、これにより地震学者たちは自信を喪失してしまいます。

 東日本大震災以降不可能論というのが出てきて、地震学の敗北というものが言われました。地震学会は自信を喪失してしまったのです。そして地震学では短期予測を目的とした研究はほとんど行われなくなったのです。地震予知に何千億円もの予算を使いながら成果がないじゃないか、これはある意味事実なんですけれど実は観測網のインフラの維持にお金がかかっている。それが地震予知研究の目的化してしまった。観測網の整備にお金を使ってきたのが地震予知研究の真実なんですね。(出典:1. 東海大学海洋研究所所長 長尾年恭(としやす)氏談)

政府の取り組み

 平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の経験を活かし、地震に関する調査研究の成果を社会に伝え、政府として一元的に推進するために、地震防災対策特別措置法に基づき、平成7年7月、文部科学省の特別機関として地震調査研究推進本部が設置されました。また、2011年8月に内閣府に「南海トラフの巨大地震モデル検討会」が設置されました。

 そして、誰でも一度は聞いたことのある政府による情報発信。

 2018年2月、地震調査研究推進本部の下部組織である地震調査委員会が、南海トラフの巨大地震が今後30年以内に起きる確率について、これまでより高い「70%から80%」に見直し、新たに公表しました。北海道の根室沖の巨大地震についても「80%程度」に引き上げられました。

 地震の規模  : M8~M9クラス
 地震発生確率: 30年以内に、70%~80% 

 内閣府に設置された「南海トラフの巨大地震モデル検討会」は、南海トラフの巨大地震を対象として、これまでの科学的知見に基づき想定すべき最大クラスの対象地震の設定方針を検討することを目的として設立された検討会です。その中間報告書が平成23年12月27日付けで公表されています。

 その目次は以下のようになっています。

 ここで気づくのは、国民が最も高い関心を示している 「地震予知」 については最初から検討の対象としていないこと。

 過去の地震の痕跡を詳細に調べ、その最大値を防災計画の基準に使用としているように見えます。

 まあ、それはそれで重要でしょうが、国民の最も知りたいニーズはここでも無視されています。 

 

南海トラフの巨大地震モデル検討会  中間とりまとめ 南海トラフの巨大地震モデル検討会 中間とりまとめ 平成23年12月27日
Ⅰ.はじめに.
II.南海トラフの最大クラスの巨大な地震・津波に関する検討スタンス.
1.これまでの対象地震・津波の考え方. .
2.東北地方太平洋沖地震から得られた教訓と知見 .
3.南海トラフにおける最大クラスの地震・津波の考え方 .
(1)南海トラフで発生した過去地震の特徴 .
(2)地震学的に考えられる巨大地震モデルの構築 .
4.調査・研究成果の活用の考え方. .
(1)過去地震に関する調査・研究 .
(2)フィリピン海プレートの構造等に関する調査・研究 .
III.過去地震の震度分布・津波高に関する調査・研究成果 について . .
1.古文書調査 .
(1)震度分布に関する資料 .
(2)津波高に関する資料 .
2.津波堆積物・地殻変動痕跡等の調査 .
(1)高知大学による調査 .
(2)産業技術総合研究所グループによる調査.
3.遺跡の液状化痕跡調査 .
4.地殻変動調査 .
5.1.~4.の調査のまとめ .
IV.フィリピン海プレートの構造等に関する調査・研究成果 について.
1.フィリピン海プレートの形状等 .
(1)フィリピン海プレートの構造に関する調査・研究 .
(2)プレート運動に関する調査・研究 .
(3)フィリピン海プレートと陸側のプレートの境界面の形状 .
2.南海トラフにおける津波発生メカニズム .
(1)津波発生メカニズムに関する調査・研究 .
(2)分岐断層に関する調査・研究.
V.想定震源域・想定津波波源域と地震規模 .
1.想定震源域・想定津波波源域 .
2.想定地震の規模 .
(1)マクロ的な断層パラメータ等について .
(2)想定震源域に対応する地震の規模(暫定値).
VI.今後の検討について.
1.震源断層モデル・津波断層モデルの構築 .
2.震度分布・津波高等の推計.
(1)震度分布の推計手法について .
(2)津波高等の推計手法について .
3.今後の検討に当たっての留意事項.

地震予測を諦めない人たち

 地震国日本。日本の地震学は、世界的にトップレベルにあることは間違いありません。しかし、その研究者たちが諦めてしまった地震予測。

 何とかならないものでしょうか。

 自然科学の分野で日本人ノーベル賞受賞者に共通して言えることは、ブレークスルーを果たしたということ。これまで誰も思いつかなかった、あるいは、不可能だと思われていたことを新たな視点から解決策を見つけ、成し遂げた。

 地震学は、まさに、この岐路に立たされているように思います。

 地震学会が諦めた地震予知を可能にするブレークスルー。

 それをやるのは、あなたです。なんてね。

 ここまで読んで、奇妙なことに気づきませんか。それは、本当に地震予知はできないのかということです。

 数十年前には、がんの治療は不可能と考えられてしました。研究して新たなことが分かれば分かるほど、その治療が難しいことが分かってきたのです。それががん細胞の突然変異の速さでした。治療薬を開発している間に、がん細胞が別の性質のものに変化してしまう。さらに、転移が速く、どれががん細胞か見極めるのが難しい。

 しかし、医学の分野では、着実に実績を重ね、今では、早期がんは完治できるまでに治療法が進歩しています。

 地震予知で自信喪失の学会メンバーとは大違い。

 しかし、地震予知を諦めていない研究者もいます。

 いよいよ本記事の本題です。これを書くためにこの記事をアップしました。

 ここで、用語を確認しておきましょう。日本地震学会、気象庁が公表している定義です。

地震予測と地震予知の違い(日本地震学会の定義)
地震予測とは、「地震の発生時間」「地震の発生場所」「地震の大きさ(マグニチュード)」の一部またはすべてを地震発生前に推定することであり、地震予知とは、地震予測の中でも特に確度が高く警報につながるものと地震学会では考えています
緊急地震速報(気象庁の定義)
 緊急地震速報とは地震の揺れの警報・予報です。

 緊急地震速報は地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを素早く解析して、震源や地震の規模(マグニチュード)を推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を予想し、可能な限り素早く知らせるものです。

(予報は震度の目安として震度3以上のもので警報は震度5弱以上のものでさらに震度6弱以上のものに対して特別警報と取り決めされています。)

地震予測はできるかも知れない

 国が短期予測に消極的になる中、民間レベルで地震予知に挑む人たちがいます。地震学の専門家ではない一人の技術者が地震予知に取り組んでいます。それが内山義英(よしひで)さんです。

 彼は、竹中工務店技術研究所チーフエンジニア、株式会社ハイテックのチーフエンジニアをされた方で、世界初の地上100mを超える超高層免振構造ビルを設計した免震技術の第一人者です。現在は、静岡地震防災研究会の代表およびブレインの代表を務められています。雨の後のタケノコのように巷に溢れる気象予報士と内山さんとではレベルが違うということをまず知る必要があります。
 
 内山さんは、いかに地震から建物を安全に保つかという研究を10年にわたり行なった中で、地震の予知の研究に挑戦したいと考えるようになり、独自に研究。その結果、地震予知につながる兆候を見つけたことから、会社を退職後、出身地の静岡に戻り、地震予知の研究に邁進することになります。

 内山さんが見つけた地震予知につながる兆候とは何か?

地震予知のための兆候とは

 
(この項は、出典1に基づき記述しています。)

 地震というのは自然現象です。これを予知できないというのは科学者として言うべきことではない。科学者であればどんな現象であっても原因があるのでそれを究明していく姿勢をとらなければいけない。

 内山さんが地震予測会社を始めたのは地震に先立って起きるある前兆現象を発見したことがきっかけでした。

 それが 地電流 の異常です。

 内山さんは7年の歳月をかけ過去の観測データをつぶさに調べました。調べた地震波は1000とか2000では語れないほど多くのものでした。そして、この全ての地震に対して地電流、地磁気の異常が発生していたことを突き止めたのです。100%の相関関係がある、ということが分かってきました。これであれば精度の高い地震予測に繋がる。これが本格的な地震予知研究のきっかけとなります。

 地電流とは地中を流れる微弱な電流です。地震が発生する直前、その断層の岩石にはずれて動こうとする強い圧力がかかります。この時、圧電効果と呼ばれる現象によって、電子が発生し地電流が流れます。

 実は、この地電流は以前から地震の前兆現象として注目されており、1994年頃から始まった地震時の観測データは公開されていました。しかしそのデータは地震予知研究には活かされていませんでした。

 内山さんは、過去の大地震が起きる数日前に地電流の異常が捉えられていたことを観測データから見つけ出しました。

 たとえば、東日本大震災の10日前に地電流の大きな異常が観測されていました。しかし、それが地震予報に反映されることはありませんでした。

地磁気の異常
 地磁気の異常(2011年3月1日、女満別観測点)

 内山さんは次のように述べています。

 「こういった異常なデータがあったにも関わらず、誰も活用していなかった。ここでまず一つ大きな驚きがありました。データの宝庫なわけですよ。びっくりするような前兆現象が見つかった。ある意味執念深かったからかなあと思います。」(出典1)

 しかし、地電流の異常だけでは、精度のよい地震予報を発するのは困難です。なぜなら、求められる地震予報とは、「いつ、どこで、どの程度の地震が発生するのか」というものだからです。地電流は常に変動しており、その異常値だけに着目しても精度のよい地震予報を行うのは困難です。

 そこで内山さんは、地電流に加え、さらに二つの手法を組み合わせることで地震予測の精度を高めることにします。それが「低周波音」と「b値」です。

 低周波音とは、人間の耳には聞こえない非常に低い音です。

 クジラや象のような大型動物はこの音を聞くことができ、2004年のスマトラ島沖地震では低周波音を感知した観光用の象が地震を察知し人命を救ったという事例が報告されています。

 地震発生の2週間前から1か月前に低周波音が発生し始めます。

 内山さんは公開されている全国の加速度計の観測データから低周波音だけを抽出する手法を用いて、その発生を検知し震源を割り出しています。

もうひとつの手法であるb値は、グーテンベルグ・リヒター則に基づき、ある期間に発生した地震のマグニチュード別発生頻度から求められる傾きの値です。

グーテンベルグ・リヒター則
 マグニチュードがM のときの地震の頻度をn(回/年)とすると、M とn の関係は、パラメーターa 、b を使って次の式により表される。

 マグニチュードの小さな地震が増えるとb値は高くなり、反対に大きな地震が増えるとb値は低くなります。

内山さんは横ずれ断層型の熊本地震のb値が0.6以下に低下した時、逆断層型の東日本大震災のb値が0.3以下に低下した時、地震が発生していたことを見出しました。

 このため、b値から大地震発生の危険度をさぐり、地震の直前予測に用いています。三つの手法を組み合わせることで内山さんの地震的中率は80%近い精度まで到達しているといいます。

 静岡県に2016年から地震予測の情報を配信しているブレイン地震予報という会社があります。その代表を務めるのが内山さんです。 現在、ブレイン地震予報は、全国に配置した合計18点の観測点で地電流を監視しています。

地震予報の入手

 ブレイン地震予報の配信する地震予報はスマートフォンアプリ『ゆれズバ』から入手可能です。

 iphone版とAndroido版がそれぞれリリースされています。利用料金は、最新予報が120円。定期予報が月額360円です。

 この料金を高いと思うか安いと思うかは人それぞれでしょう。

 しかし、内山さんのブレイン地震予報という会社は、内山さんを含め、わずか3名で運営しており、独自の観測機器を設置しています。そのメンテナンス費用がバカにならない。

 無料アプリばかり使っていると、『ゆれズバ』に課金するのは馬鹿らしく思えますが、ものは考えようです。

 あなたは地震保険に入っていますか。地震保険って、ものすごい高額ですよね。火災保険の掛け金とほぼ同額になるオプションとしての地震保険。いつ起きるか分からない地震に備えて高額な保険料を支払い続けるのは考えもの。『ゆれズバ』で警報が出たときだけピンポイントで地震保険に加入し、警報が解除されたら、地震保険を解約する。こんな使い方もありかも知れませんね。

 しかし、政府の支援なく民間レベルで孤軍奮闘されている内山さんを応援しようと『ゆれズバ』に課金するのもあり、と言う気もします。安心はお金では買えない。クラウドファンドで資金を集め、観測網を充実し、地震予報の精度の向上を図るという方法もあると思うのですが。

 政府は、地震短期予報にもっと力を注ぐべきだと思います。それが国民の最大の関心事なので。そして、警報を発したときに生ずる影響をどのように緩和するのか。これも政府の仕事でしょう。被害モデルばかり作っていても、ピント外れのように思います。

出典:
 1. 「ガリレオX、第207回、地震は予測できるのか ~大地震予報の行方~」、2019年10月27日放送、BSフジ
 2. 東京大学「地震活動解析システム」
3. 地震予測なら「予知するアンテナ」
 4. 地下天気図プロジェクト、東海大学