「地震の発生を高精度で「ピンポイント予測」。スマホアプリ「MEGA地震予測」に注目」という怪しいニュース記事が垂れ流されているが、原理は一言も書かれていないけれど本当なのか?

サイエンス・テクノロジー

 2023年5月30日、Rakuten Infoseek Newsが、「地震の発生を高精度で「ピンポイント予測」。スマホアプリ「MEGA地震予測」に注目」という記事を配信しました。

 記事のタイトルに興味を覚えたので、記事を読んでみたのですが、本文に939文字も使いながら、肝心の地震予測原理については一言も書かれていません。書かれているのは、「特許」を持つ地震予測方法を開発、というほとんど詐欺記事のような内容です。

 「MEGA地震予測」の内容以前に、Rakuten Infoseek Newsがこのようなお粗末な内容を配信するのでは困ります。

 次に、「MEGA地震予測」をプレスリリースした「株式会社地震科学探査機構(JESEA)」について調べてみます。

 JESEAのホームページを開くと、JESEA取締役会長・東京大学名誉教授 村井俊治氏の顔写真があります。村井俊治について調べると、測量がご専門のようで、日本測量協会会長を務められていた方です。つまり、地震とは無縁の先生です。

 これで、JESEAの地震予測手法がリモセンなのだろうと推測できます。そして、リモセン技術では地震の予知はできないと推測できます。

 記事の中に「ここ数年で地殻変動以外の多種多様な前兆現象に関する検証研究が進み5つの特許を取得する中で、 同社は新たな地震予測方法を開発。それが「ピンポイント予測」です。」とあります。では、JESEAが取得した特許とはどのようなものなのか調べてみます。

 特許庁のHPから検索すると、株式会社地震科学探査機構が8件の特許を申請し、7件が特許として認められ、1件が特開となっています。気になったのは、特開となっている申請の時期と内容です。

 出願日は、2013年9月9日、発明名称は「衛星測位による地震予測方法」となっています。つまり、地震予測の最もコアとなる部分が特許承認されていないということになります。

 この申請詳細を読むと、「国土交通省国土地理院の1200点以上の電子基準点と呼ばれる衛星測位観測点の衛星測位データのX、Y、Z座標から算出されるXY、XZ、YZ投影面における特定の三角形の面積変動率が地震前に閾値を超える前兆現象が現れることを検証した。」と書かれています。面積に着目したところがミソということのようです。

 なるほど。やっと原理を理解できました。面積変動率に着目したことが地震予測の基本のようです。リモセンのデータを使うには、誤差あるいは雑音をどうキャンセルするのかに関心があったのですが、うまい方法を考えたものだと思います。

 これって、地震予知に使えるかも知れない。そう感じました。

 ちょっと気になったのは、村井俊治先生が測量畑であること。東大には、歴史ある東京大学地震研究所があり、東大派閥の中でも村井先生は地震については門外漢という立場なのでしょう。学閥社会なので、村井先生の研究は地震学者からは無視されると考えられます。なぜなら、自分の研究したい予算が確保できなくなるから。たくさんの観測計器を設置する予算を確保することが地震学者の仕事になっています。そこにリモセン技術など出てきたら困ります。だから、地震学会の人たちは村井先生の研究成果を徹底的に無視するでしょう。

 会社のHPは読まずにこの記事を書きましたが(たぶん、読んでも知りたいことは書かれていない)、なかなか面白いアプローチだと感じました。

 地電流を利用する「ゆれズバ」とリモセンを利用する「MEGA地震予測」。竹中工務店と日本工営のOBの方々の知恵の出し合いです。研究畑の民間出身者が考え出した地震予測手法です。

 観測計器をたくさん設置する予算を確保することを職務としている大学の教授とは違います。

 この記事の内容が理解できない方は、自分が感じた疑問点を調べてみてください。出典記事がアホなのはネット記事配信会社の責任であり、地震予測サービスを提供しようと努力している会社は、しっかりした会社です。

 ちなみに、管理人は日本リモートセンシング学会に論文を発表したことがあり、素人ではありません。