無料で使える多言語翻訳ソフト『DeepL』は抜群の翻訳精度|その便利な使い方とは

やっと使える翻訳ソフトが出た!

何かと便利な外国語翻訳ソフトですが、言語体系の異なる日本語への翻訳はどのメーカーも苦心していたようです。ところが、最近、「DeepL」という翻訳ソフトが人気を集めています。とても自然な感じの日本語に翻訳してくれ、読んでみてもその日本語に違和感を感じさせません。つまり、表示される翻訳結果の内容の筋が通っていると言うことです。

鳴り物入りで登場した「Googleニューラル機械翻訳(GNMT)」は、一見、きれいな日本語に見えるのですが、中身がぐちゃぐちゃ。翻訳するふりをして適当な日本語の単語を組み合わせて表示しているだけなのではと思えるほど意味不明な翻訳をする場合があります。

機械翻訳は、どのメーカーでもAIを使っているのですが、「DeepL」の翻訳精度が高い理由は、様々な専門分野ごとに他社と比較して圧倒的な量の文字情報をAIに読ませ学習させているためのようです。

英語を読める人でも、日本語に翻訳されていると、漢字だけを拾い読みして読み飛ばすことが可能となり、時間の節約になります。

「DeepL」の便利な使い方

「DeepL」はweb版とWindows向けアプリ版の2種類があり、どちらも5000字までの翻訳なら無料で使えます。回数制限はないので、翻訳したい文章を5000字以内の文章に小分けし、翻訳すれば、長い文章でも翻訳可能です。

ところで、Windows向けアプリ版はとても便利です。ネット記事でもどんな媒体でもよいのですが、たとえばWord上の英文テキストの範囲を指定し、[Ctrl]+[C] を2回押すだけで「DeepL」が自動起動し、翻訳を開始します。範囲のコピーペも必要ありません。言語の種類も自動判別するので設定不要です。

この機能は、本当に便利です。

[Ctrl]+[C] を2回押すだけと書きましたが、[Ctrl]キーを押さえたまま[C]キーを2回押しても結果は同じです。こちらの方が使いやすいと思います。なお、このショートカットキーは、画面右上にある三本線アイコンの設定から変更可能です。

DeepL Web版とWindows向けアプリ版

「DeepL」翻訳結果の留意点

「DeepL」は専門分野のAI学習をしているため、とてつもなくマニアックな文章でも翻訳結果を表示します。では、その結果は正しい翻訳になっているのでしょうか。マニアックな分野だからこそ気になるその翻訳精度とは?!

1879年(明治12年)、末松謙澄が留学先のロンドンで執筆・出版した論文P.107 に以下の記述があります。まさにマニアックな記述なのですが、DeepLはどのように翻訳するか見てみましょう。

末松謙澄の論文  ‘The Identity of the Great Conqueror Genghis Khan with the Japanese Hero Yoshitsuné‘
 Ban Nobu-Yuki  [a Japanese scholar who lived half a century ago] states in his work,  Chiu guai keii Den , deducing arguments from various sources, that at the time Yoshitsuné crossed over from Yezo to Muh-kuh, anciently called Soo-shun, he changed its name to Mantchoo, a name taken from that of one of his celebrated ancestors, and by his ability and popular favour made himself master of those regions. His successors, also inheriting his bravery, at last invaded China, and became Emperors, and called his dynasty Yuen or Gen, taking the pronunciation of his family name.”

この英文をDeepLで翻訳した結果が以下のものです。

末松謙澄の論文 DeepL 翻訳結果
坂信行(ばんのぶゆき)は、その著書『奇居慧伝』の中で、様々な資料から推論して、義経が蝦夷から牟遅(むじょ)に渡る時、その名を萬歳(まんちょう)と改め、これは彼の有名な祖先の名から取ったもので、その能力と人望によってその地方を支配することになった、と述べています。彼の後継者もまた彼の勇気を受け継ぎ、ついに中国を侵略して皇帝となり、その王朝を彼の姓の発音をとってユエンまたはゲンと呼んだ。”

まず、最初に気づくのが、「坂信行」って誰? 原文は、’Ban Nobu-Yuki’ です。次の『著書『奇居慧伝』」の部分。原文は、’Chiu guai keii Den’ です。

この翻訳結果はでたらめで、正しくは、「 伴信友(ばんのぶとも)は、その著書『中外経緯伝』の中で 」と翻訳しなければなりません。実は、末松の英文に誤植があり、正しくは ’Ban Nobu-tomo’ です。 この部分を訂正してDeepLで翻訳しても結果はほとんど変わりません。

AIが学習するとこのようなことが起きるという一つの事例です。Google翻訳でも似たようなねつ造翻訳をたまにします。

DeepL の翻訳精度は極めて高いのは事実ですが、ありもしない人名や著書名をもっともらしく翻訳結果として表示する可能性があるということを理解する必要があります。”坂信行” も “奇居慧伝” もその存在を確認できません。どこからこのような翻訳を導き出したのか不思議です。

通常、このようなもっともらしく書かれた翻訳結果は正しいと判断してしまいがちになりますが、それは危険です。

さらに、’ [a Japanese scholar who lived half a century ago] ‘ の部分を DeepLでは翻訳していません。'[ ]’ を ‘ – ‘ に変更すると翻訳してくれます。この部分が翻訳されないと、著者がどういう人物なのかが分からなくなります。

 このようなケースもあるということを理解した上で、この翻訳ソフトを上手に使いこなしましょう。

 Google翻訳の場合、自分で訳した方が速いので、出力結果を使うのは難しいと感じますが、DeepL で翻訳した結果をベースに修正していく作業はかなり楽だと感じます。

 ちなみに、翻訳の後半部分もかなりの修正が必要です。この部分は、末永が引用している瀬脇寿人の「浦潮港日記」から、満州は源氏の始祖多田満仲の音を借用して名付けられたという趣旨のことが書かれているのですが、訳文を読んでも分かりません。

 末永の論文タイトルを日本語訳すると「征服王チンギス・ハーンと日本の英雄義経との同一性」となります。これに関心のある方は、「なんでも保管庫3」で探してみて下さい。全文を読めます。

ちょっと裏技をご紹介

 DeepL が気に入ったとしても、個人で契約するのは余りお勧めできません。5000字を超える翻訳をする機会など普通の人はあまりないと思います。

 ところで、非常に長文の翻訳をしたい場合、とっておきの方法をご紹介します。たとえば、数十万字の原稿を翻訳したい場合などです。5000字毎に区切って翻訳するのはとても面倒です。

 そんなときは、DeepLの購入契約をします。そして、翻訳を行い、終わったらすぐに解約します。契約後1ヶ月間は無料で使え、契約解除はいつでも簡単にできます。

 一度解約しても、契約日から1ヶ月間は無料で文字数制限なしの翻訳サービスを使うことができます。

 500ページ以上あるとても長文の外国語文献を翻訳したい場合などに使える裏技です。

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