海賊の財宝伝説に迫る(6):財宝の現在位置を割り出す

ココ島の財宝伝説

 財宝伝説には多くのトラップが仕組まれています。そもそも、財宝の隠し場所など人に教えるようなものではありません。だから、伝説の場所に財宝がなかったからといって、伝説がウソだと言えないと思います。

管理人が気になったこととは!?

 ココ島の財宝伝説を読んでいて気になったことは、「なぜ、見つからないのか」ということでした。7km四方の小さな島なのに、300チームのトレジャーハンターが挑んでも海賊の財宝を見つけることができない。

 ココ島に隠された海賊の財宝に魅了されたトレジャーハンターの一人にアウグスト・ギスラー(August Gissler)がいます。彼は、20年もの間、奥さんとともにココ島に住み続け、財宝探しをしましたが、結局見つけることができずに島を去りました。

 「彼らは、大きな見落としをしていた!」 そんな気がします。「ココ島に本当に財宝が埋められているとすれば!」

地震と津波

 中南米は日本と同様に地震がとても多い地域です。環太平洋火山帯に位置する国々では、日本人が想像する以上に多くの巨大地震が発生しています。

 1823年まで約250年にわたりコスタリカの首都だったカルタゴは、1841年と1910年の二度の大地震で街が崩壊してしまいました。管理人がコスタリカに住んでいたときも大きな地震があり、インフラが甚大な被害を受けました。

 16世紀以降、スペインの植民都市はたびたび地震に襲われ、壊滅的な被害を被った都市もたくさんあります。カリブ海の海賊たちの拠点であったポート・ロイヤルが、1692年6月7日に発生した地震で壊滅し、その直後に発生した津波により町はカリブ海に沈みました。  

 中米地域において、1539年から1996年までの457年間に49回の津波の発生が確認されています。9.3年に一度津波が起きている計算になります。このうち、37回が太平洋側で、12回がカリブ海側で発生しています。一方、19世紀中期以降、津波の発生頻度は劇的に増加しています。1850年から1996年までの146年間をみると、津波は43回発生しています。これは3.4年に1回の頻度になります。このように1850年以降に津波が多い理由は、沿岸近くに人々が住み始めたことから、津波を認識する機会が増えたというのが実際のところかも知れません。

 津波を発生させた地震源は、太平洋側では、ココ島-カリブ沈降帯(CO-CA)によって引き起こされています。カリブ海側では、北アメリカ-カリブプレート境界(NA-CA)で5回発生しており、また、北パナマ変成帯(NPDB)で7回発生しています。

 津波の経験的発生評価によれば、表面波マグニチュード(Ms)7.0以上の大きな地震が発生したとき、中央アメリカの太平洋沿岸地域で43%、カリブ海側で100%、津波を発生させることを示します。
 (Source: “Tsunamis and Tsunami Hazards in Central America”, Natural Hazards, Volume 22, Mario Fernandez, Enrique Molina, Jens Havskov, Kuvvet Atakan, 2000)

 1854年、コスタリカの太平洋側沿岸の都市は津波により大きな被害を受けたとの記録が残されています。
(Source: Universida de Costa Rica,RSN)

 ハワード船長が処刑されたのが1819年から1820年頃と考えられます。メアリー・ウエルチが流刑監獄から釈放されたのはそれから20年後のこと。1839年から1840年頃と考えられます。その後彼女は結婚し、相当な老婆になってから宝探しを始めます。英国海軍に逮捕された時の彼女の年齢が、仮に20歳だったとすると、釈放されたのが40歳の時で、直ぐに結婚。年齢的にはその可能性が高いと思います。

 宝探しを始めたのが60歳と仮定すると、1860年頃ということになります。それは、ココ島を襲った1854年の大津波の後ということです。


  Foto: Nekoshi

 コスタリカの太平洋岸を襲った大津波は、当然ココ島にも押し寄せたでしょう。そして、地形を変えるくらいの変化をもたらしたのではないでしょうか。

 津波は、海底が浅くなるにつれて波が大きくなります。そして、津波が高く押し寄せる場所は、浜辺ということになります。海賊が財宝を隠したとされるココ島の数少ない浜辺であるウエハー湾の砂浜にも津波が押し寄せたのではないでしょうか。そして、そこで6ヶ月もの間キャンプ生活を送ったメアリー・ウエルチでさえ元の姿が分からなくなるほど地形が変わってしまった。もちろん、目印の大木など跡形もなく流されてしまった。

 大津波といっても波の高さは10m以下だったと考えられますが、ウエハー湾に浜辺ができるということは、その周辺は比較的遠浅な海底が続いているのだと思われます。そこでは、津波は高さを増し、内陸深くまで押し寄せます。

 伝説では、捕鯨船のクルーが薪の採取で財宝の隠し場所の目印だった大木までも切ったとされていますが、これはおかしい。木がたくさん生えているココ島で、海賊が目印に使うような杉の大木を切り倒す必要はありません。さらに、船で使う薪材としては針葉樹の杉は使わない。火持ちが悪いからです。

 数十年前まで、日本の遠洋漁業船は、燃料として薪炭を積み込んでいました。炭づくりに使う樹木の種類により薪炭にも色々な種類があるのですが、遠洋漁業船に積み込む薪炭は、広葉樹のナラから作られた最高級のものでした。それに海水をかけて燃えにくくして大切に使ったそうです。

 「津波」に不慣れな欧米人たちの記録では、目印が根こそぎ無くなっていることを論理的に説明できなかったために、捕鯨船の仕業ということにしたと思われます。これが、管理人が考えた新たな視角です。


   Foto: 財宝を発見! 写っているダイバーはうちの息子たちです。撮影場所:グアム

目印が消えた原因が津波だとすると財宝は今どこに?

 欧米のトレジャーハンターたちは大きな過ちを犯しました。「津波」により地形が変化するということを知らなかったのです。

 ココ島で20年もの間、海賊が隠した財宝を探し求めたアウグスト・ギスラー(August Gissler)はドイツ人でした。彼には、「津波」という発想が全くなかったのだと思います。

 では、「津波」という要素を入れると財宝探しはどう変わるのか? 

 トレジャーハンターたちは、財宝を探すとき、① 海賊たちはいつでも掘り出せるように、海岸から近い場所に埋めた、② そして、埋めた深さは、掘り出すことを考えて浅いはず、③ もし、洞窟に隠したとすれば、その入り口は海に面しているはず、・・・・、などと仮説を立てたのではないでしょうか。

 しかし、「津波」が起こったとすると、彼らの立てた前提はすべて覆ることになります。

 ① 津波により財宝は内陸部まで砂と一緒に運ばれ、地下数メートルの場所に埋もれた、② 海岸の洞窟は津波により崩れてしまった、③ 津波の引き波により、財宝は海底に引きずり込まれた、・・・・、という全く新しい仮説を立てることができます。すると、これまでの探査方法が一変することになります。

 従来は、金属探知機を使った探査が主流でした。しかし、この方法は”最新のテクノロジーを導入した探査”だったにもかかわらず、成果を上げることができませんでした。それもそのはず、彼らは、「海賊が埋めた財宝」を必死に探していました。しかし、「津波が埋めた財宝」という発想が全くなかった。だから、いくら探しても見つからない。

 いつの日か、・・・・、ココ島に、・・・・管理人が、・・・・財宝を探しに・・・、行く日が来る・・・
 ということはありません。管理人は船に弱いのでココ島までは行けません。机上で推論しているだけならタダですが、実際に行くとなると膨大な費用がかかります。さらに、下手に財宝が見つかってしまうと、欲に目が眩んだ同行者から殺されてしまうかも知れません。

 やはり、宝探しは、机上でやるもの。手を出したら人生を棒に振ってしまいます。

 「海賊の財宝伝説に迫る」シリーズはこれでひとまず終了します。約5ヶ月かけて書いた記事です。

 なぜ、財宝が見つからないのか、それが管理人にとっての疑問でした。自分なりに推論を提示できたので、満足しています。「宝島」の財宝の歌は、スチーブンソンの創作ではなく、当時伝わっていた話をそのまま書いたものだと思います。 “Fifteen men on the dead man’s chest Yo-ho-ho, and a bottle of rum! Drink and the devil had done for the rest Yo-ho-ho, and a bottle of rum!”

 海賊船には100人以上のクルーが乗っているのに、財宝を隠したのがなぜ15人なのか。この小説は、ココ島の伝説を色濃く反映して書かれていることが分かりました。
 

ココ島の財宝、ついに発見される!? (2015年3月10日報道)

 2015年3月10日付け「ワールド・ニュース・デイリー・レポート」が「ココ島で2億ドルの伝説の財宝出土」という見出しで、ココ島で財宝がついに発見されたと報じました。ほんの5ヶ月前のことです。


  『Fabulous 200 Million Dollar Treasure Hoard Unearthed in Cocos Island』

 この記事の内容は以下のようなものです。

 2105年3月10日、サン・ホセ発
 ココ島に駐留するコスタリカ国立公園レンジャーのグループが、最近発生した嵐の後で、現在、歴史上、最も価値のある驚くべき財宝を発見した。発見された宝物は、金貨や銀貨、金銀の延べ棒、宝石、燭台、宗教的な用具で構成されており、その価値はおおよそ200,000,000ドル(約249億円)と推定されている。
 ココ島は太平洋に位置する小さな島で国立公園に指定されており、コスタリカの太平洋岸から約550キロ(342マイル)に位置している。 この島には様々な宝物が隠されているという伝説はよく知られていたが、この島は「保護区」として1978年以来、そこでの宝探しが禁じている。
 6名のパークレンジャーたちが、渡り鳥など海鳥の営巣コロニーの嵐によるダメージの状況を評価するために、島の周りに調べていたとき、彼らは、波打ち際で埋もれた古い木箱、もしくは木製の衣装箱らしきものを見つけた。それを掘り出してみると、衣装箱は5つあり、他にも様々な物品が出土した。それらはかなり昔に埋められたものであることが分かった。
 「私たちは浜辺を歩いていました。すると、砂から何かが突き出ているのが目にとまりました。」パークレンジャーのイグナシオ・ラミレス氏(Ignacio Ramirez)は言う。
 「私たちはそれを掘り出しました。すると、いくつもの古い木製の衣装箱が出てきました。これらの箱は、すべて金と銀を満たされていました! その後、私たちは、二体の黄金の聖母マリア像、さらに、その他の宗教的な用具を掘り出しました。私たちは、自分たちの上官たちを呼び、『財宝を見つけた』と報告しました。 彼らは、私たちが冗談を言っていると思っていましたが、私たちが見つけたものを説明すると、専門家チームを派遣することを決めました。」
 宝物の中身は、天文学的数である89,000枚のコイン、金銀のインゴットと金銀細工の工芸品が含まれています。多くの宗教的用具は金や銀で作られており、貴重な宝石で飾られています。それらには、36の十字架、3つの聖杯、そして、幼子イエスを抱いた等身大の金無垢のマリア像2体が含まれます。
 (以下、略)

 

 この記事はとても良く書けていて、全く違和感を感じさせません。スペイン語の文章はいつもこんな感じです(この記事は英文ですが、たぶん、その原文はスペイン語でしょう)。

 しかし、この手のweb上の記事は、気を付けて読まなければなりません。書かれていることが本当にあったことか、まずはその真偽を確認する必要があります。

 この確認はとても簡単です。

 もし、上の見出しのような財宝が発見されたら、金の国際市場価格は少なからぬ影響を受けます。需要と供給の関係から、大量の黄金が発見されたというニュースは、急激な供給量の増加懸念から、金の価格低下を招きます。
 
 そこで、金の先物取引のチャートを見てみましょう。

 すると、2015年3月6日(金)に金の先物取引価格が大幅に下落しているのが確認できます(31.90ドル安)。財宝発見の記事が公開されたのは3月10日(火)なので、事前に情報を入手したグループが売り抜けたようにも見えます。

 実際のところ、上のような金価格変動は平時でも起きるので、別の方法での確認が必要です。
 そこで、次にコスタリカの新聞記事で確認します。2億ドルもの財宝が見つかったのが事実であれば、現地の新聞報道は大変なことになっている筈です。

 コスタリカの全国紙として下の6紙がありますが、日刊紙では、”La Nación”と”La República”が有名です。コスタリカ赴任中はいつも読んでいた新聞です。この2紙の報道ぶりを調べてみました(実際には、以下の全部の新聞を調べました)。
 ① LA NACIÓN San José www.nacion.com
 ② LA PRENSA LIBRE San José www.prensalibre.cr
 ③ DIARIO EXTRA San José www.diarioextra.com
 ④ LA REPÚBLICA San José www.larepublica.net
 ⑤ AL DÍA San José www.aldia.cr
 ⑥ LA TEJA San José www.lateja.co.cr

 すると、案の定、想定していた結果となりました。「コスタリカの新聞各紙はどこも、この内容を報じていない」

 つまり、「でたらめの記事」だということが確定しました。

 まったく人騒がせな記事です。この記事を書いたのは「Barbara Johnson」という人です。ばからしいので、これ以上深追いするのは止めます。宇宙人やUFO出現の記事ならば、それなりに楽しめますが、こんな記事をもっともらしく書くこのHPの管理人はどうかしています。やっても許される程度の遊びとやってはいけない遊びの判別が付かない方のようです。ココ島の財宝伝説は、オカルト伝説とは一線を画します。オカルト伝説は儲かりませんが、ココ島の財宝伝説は大儲けできます。

 以下のサイトでも、この記事がフェイクであると指摘しています。ところが、HPの作り方が偽記事の発信元と同じなので、同一管理人でしょうね。自作自演か。あほらしい。


 Source: http://www.thatsfake.com/was-a-200-million-dollar-treasure-hoard-unearthed-in-cocos-island/

 書きかけの部分が過去記事のあちこちにあるので、順次、校正を加えます。最初から通読された読者の方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。一ヶ月後くらいに再度ご覧戴くと、きれいな文章になっていると思います。

 「悪意のweb管理人」はたくさんいるようです。「悪意のweb管理人」が発した、「悪意に満ちた情報」を垂れ流すのは、本人の意思にかかわらず、同罪です。ネット上の情報は、必ず複数のメディアでその真偽を確認した方が良いようです。