中国のサイバー部隊「五毛党」って何?


公開日:2020年5月24日  最終更新日:2020年7月26日

 2020年5月22日、夕刊フ
ジが配信した記事に関心が湧きました。

【日本復喝!】日本の保守層を狙う中国のサイバー部隊「五毛党」 ソフトイメージでだましつつ「チベットの弾圧はウソ」「安倍支持だけど…」
 出典:zakzak by 夕刊フジzakzak by 夕刊フジ

 
 「zakzak」というサイトは、夕刊フジの公式サイトです。この手のサイトの記事は、いつ削除されるか分からないので、内容を詳しく書くことにします。

 記事の執筆者は、産経新聞論説副委員長の佐々木類氏です。

記事のあらまし

【日本復喝!】日本の保守層を狙う中国のサイバー部隊「五毛党」 ソフトイメージでだましつつ「チベットの弾圧はウソ」「安倍支持だけど…」
 「五毛党」と呼ばれる中国のサイバー部隊をご存じだろうか。正式名称は、「網路評論員(インターネット・コメンテーター)」である。

 国内外のネット上で、中国共産党に有利な世論を醸成することを狙う世論誘導集団で、「ネット水軍」とも呼ばれる。中国共産党宣伝部の声を広げ、彼らにとって都合の良いストーリーを語るのが目的だ。

 一般人を装い、ネット上のコメント欄やWe Chat(微信)などを監視しながら、党に有利な書き込みや批判的なコメントの摘発を行う。人権や領 土、民族といったキーワードを使い、中国共産党と異なる意見を持つ組織や人物を集団で徹底して罵倒したり、レッテルを貼ったりし、社会的に引きずり下ろす ことも狙う。

 「五毛党」という名称は、中国共産党が当初、コメント1本につき、五毛(1毛=1・5円)支給していたことによる。2004年ごろから「五毛党」と呼ばれるようになった。最近、値段が上がって「八毛党」になったとか、ならないとか。

 15年時点で1050万人いるとみられ、中国共産党政権によるSNSへの「やらせ書き込み」は 年間4億8800万件に上るという 

 日本の公安関係者によると、日本における五毛党の書き込みで特徴的なのは、「安倍晋三首相支持」や「反習近平」といった保守層が好みそうなキーワードを駆使し、中国共産党への警戒心を持っていると思われる保守層の関心や注意を引くというものだ。

 中略

 私の手元に五毛党とみられるリストがある。 公安関係者から独自に入手した内容 は、「安倍支持。中華圏関連のつぶやきが多い。東アジアの平和と繁栄、日中友好路線を支持」「チベットの弾圧はウソ、チベット人より」「安倍支持。でも、度を超えた反中、反韓には反対」など…。

 ルアーで魚を釣るように、ネットにいる自称保守や無党派層への接近を図る。彼らの狙いは、中国共産党を敵視し、批判したりするターゲットの「つるし上げ」だから厄介だ。そこは日本でも中国国内と同様だ。

 五毛党は、元は緩いネットワークで、投稿者らはパートタイムで働くアルバイトに過ぎなかったが、現在はかなりの数がフルタイムで統一的に行動している。

 米ハーバード大学研究チームが13年、中国のインターネット検閲について発表した調査によると、検閲で最も多いのが、大衆行動を呼び掛けるような投稿の押さえ込みだという。

以下、略

 出典:夕刊フジ

「五毛党」について調べる

 さっそく、「五毛党」について調べてみます。

 Wikipediaには、以下のように書かれています。

五毛党、by Wikipedia
五毛党(ごもうとう、英語: 50 Cent Party、拼音: wǔmáo dǎng)とは、中華人民共和国における中国共産党配下のインターネット世論誘導集団を指すネットスラングである。正式名は網絡評論員(インターネットコメンテーター)であり、2005年ごろまでは書き込み1件当たり5毛(5角(=0.5元)を口語でこう呼ぶ)が支払われていたことからこの蔑称が名づけられた。網軍と呼ばれることもある。

通常は一般人を装い、インターネット上のコメント欄や電子掲示板などに、中国共産党政権に有利な書き込みをする。または共産党「それに関連する事」を批判する人に対する集団攻撃をする。ネットを通じ、世論誘導をする役割を担っている。2015年時点で、約1050万人程度いると見られている。中国政府が世論操作のためにSNSに投稿させている「やらせ書き込み」は、年間で4億8800万件に上るという。

 次に英語表記。「五毛党」は英語で “50 Cent Party” と書きます。

 中国の貨幣単位「元」の補助単位は「角」、「分」が使われ、1元=10角=100分です。「角」は、口語では「毛」であり、少ない数量を示す「毫」が「毛」と略されたものです。(Wikipedia)

 2020年5月22日現在の為替レートは、1人民元 = 0.14ドルです。すると、5角(毛) = 0.07ドル = 7セント となります。

 「五毛党」は英語が “50 Cent Party” というのは少し過大評価ということでしょうか。

 日本円で考えると、1元 = 15.7円。 5角(毛) = 7.85円 となります。1記事書くのに8円の収入! 10万記事を書けば80万円、100万記事書けば800万円の収入です。これは美味しいアルバイト?

 簡単なコメントを書くだけでも実際は大変なこと。一日に100コメント書こうと思ってもかなりハードルが高い。しかも、100コメント書いても800円にしかならないのであれば、日本では無理という気がします。この10倍の単価でなければ誰もやらない。

 中国では、1万台のスマホを用意して、コンピュータを使って五毛党コメントを配信する会社があるようです。しかし、それを紹介するサイトは、そのコメントの質については論じていません。ネット民が読めばすぐに機械で作ったコメントだとバレバレなのではないでしょうか。

「五毛党」って本当にあるの?

 「五毛党」って本当にあるの? もしあるのであれば、メンバーになる方法を紹介して欲しい(笑)。

 佐々木類氏の記事では、書かれていません。「五毛党」って本当にあるのだろうか。まずはここから調べる必要があります。

 ちょっと気になったので、佐々木類氏の記事に一言。 「公安関係者から独自に入手した内容」とありますが、それって違法では? 少なくともそれをリークした人物は国家公務員法違反に問われ、懲戒免職処分になるはず。誰なのでしょう。リークしたのは? 違法な手段で入手した情報をこのような形で公開されても困ります。読者には確認のしようがない。まあ、フェイクニュースだろうと想像できますが。本当なら、書くはずもないこと。

 ネット上の記事を遡ると、「中国政府は年間5億件の「ニセのSNS投稿」をしている:調査結果中国政府は年間5億件の「ニセのSNS投稿」をしている:調査結果」というWIREDが2016年6月14日に配信した記事にたどり着きます。

 「ハーヴァード大学の研究チームの調査で、中国政府は1年間に推定5億件弱の「ニセのソーシャルメディア投稿」を行っていることが明らかになった。政府への支持が高まっている、という印象をつくり出すことが目的だという。」という書き出しで始まる記事です。

 その後半には次のように書かれています。

中国政府は年間5億件の「ニセのSNS投稿」をしている:調査結果 by WIRED
これまで、このような投稿は「五毛党」(英語名「50 Cent Party」)と呼ばれる集団によるものと考えられてきた。その名前は、プロパガンダ的な内容を投稿した者に対して国が支払うといわれる金額5毛(0.5元、約8円)からきている(2008年の段階で、五毛党の人数は28万人に上るという報告もあった(日本語版記事))。しかし、 キング教授の調査チームによる今回の分析ではそうした証拠は見つからず 、公務員たちによるニセの投稿が多いことが明らかになった。

 この記事を読む限り、「五毛党」の存在は確認されていないように読めます。あくまでも、中国政府公務員が主体のサイバー攻撃であると、ハーバード大学の研究結果は主張しています。夕刊フジの記事で黄色くハイライトした部分は、明らかにハーバード大学の研究結果を引用しています。しかし、ハーバード大学は「五毛党」の存在」を確認できていません。

 中国政府が公務員を使ったサイバー攻撃やプロパガンダ的投稿による世論誘導をしていることは間違いないようですが、「五毛党」の存在は誰がどのような方法で確認したのか分かりません。

 佐々木氏の文章は、信頼するに足る出典が書かれておらず、信用できません。唯一の出典らしき記述は、ハーバード大学の部分ですが、同大学の報告内容と佐々木氏の記事内容とではぜんぜん中身が違う。

 Wikipediaの「五毛党」の項目も、書いた人のレベルがわかるほどお粗末なもの。「五毛党」の存在をどのように確認したのかを最初に書くべきなのに、東スポレベルの書き方になっています。この項の執筆者は、Wikipediaの執筆能力はないようです。英語版Wikipediaの”50 Cent Party”の方が遙かに優れた書き方になっています。

 ところで、英語版Wikipediaでも、「五毛党」の存在をどのように確認したのかは書かれていません。ハーバード大学の研究を引用するだけです。でも、ハーバード大学の報告は、「五毛党」の存在に否定的で、あくまで、公務員がやっていると主張しています。

 どうなっているのでしょうか。

 本記事の早読み読者に勘違いしてもらっては困るのですが、管理人が問題視しているのは、中国政府のネット操作ではなく、あくまでも、「五毛党」というものが存在するのかということです。

 中国の人気コスプレーヤー池田七帆さんの微博のブログを頻繁に閲覧する管理人は、中国政府のネット介入を実感しています。政府批判を受けそうな問題が発生しそうになると一斉に個別ブログへのアクセスを遮断する行為に出ます。これにより個別ブログへのアクセスはできなくなり、微博のトップページに飛ばされてしまいます。

 このようなあからさまな情報操作をする国の主張は信頼できないと感じるのは管理人だけではないでしょう。

 話を「五毛党」の存在の有無に戻します。

 管理人が確認した限りでは、「五毛党」の存在を証拠立てて述べいているサイトは皆無です。何を根拠に「五毛党」のことを書いているのでしょうか。

 今回の夕刊フジの記事のように、古いタイプの人間が発信する情報は、信頼できません。「独自に入手した」と信憑性を持たせる記述をしていますが、もし、訴訟になっても、そのソースを明かすことができません。もし、それが本当であれば、リークした人間は国家公務員法違反の罪に問われることになります。フェイクであれば、執筆者の社会的失墜を招きます。どちらに転んでも軽々しく書けるような文言ではありません。佐々木氏が現役だった時代には五里霧中で読者を煙に巻くことができたのかも知れませんが、今はネットの時代。誰でも本物のニュースソースにアクセスできます。

「五毛党」ってお金をもらえるの?

 夕刊フジの記事のキャッチーな作り込みを読むと、『最近、値段が上がって「八毛党」になったとか、ならないとか。』の記述のように、逃げている部分があります。

 この記事を読んだ読者全員が、「五毛党」は存在し、政府からお金をもらってコメントを書いている数千万もの人たちがいると思ったはずです。

 でも、英語版Wikipediaには、このようなことは書かれていません。書いてあるのはこれ。

 though some speculate that they are probably not paid anything for the posts, instead being required to do so as a part of their official Party duties.[6]

 この記述の出典は、

 [6] Gallagher, Sean (13 June 2016). “Red astroturf: Chinese government makes millions of fake social media posts”. Ars Technica. Retrieved 14 June 2016. を引用しています。

 このように、英語版Wikipediaの執筆者たちは、たくさんの引用を用いながらこの項目を書いています。これに対して日本語Wikipediaは、一方的な見方の出典のみをつなぎ合わせた書き方になっています。出典リストをみると、お粗末な項目記事であることが分かります。英語版Wikiと比較するとかわいそうになるくらい。


 
 管理人が懸念するのは、確認できない「五毛党」という単語を引き合いに出し、記事のストーリーに組み込むことで、この不明確な用語が一般化してしまうことです。

 中国政府の公務員が大量にネットへの書き込みをして世論を誘導しようとしている、と主張するのであれば、出典を明らかにした上でその主張をしていただかないと、また、フェイク記事かと思われてしまいます。

 管理人は、「五毛党」の実態について調べようとしたのですが、これはとても難しいことに気づきました。問題は、言語の壁です。

 比較的正しい情報を発信していると思われる台湾のライターの記事は、中国語なので分からない。翻訳エンジンは中国語の翻訳を苦手としているらしく、機械翻訳された結果は、まったく意味不明です。台湾のライターが英語で発信している記事もあると思いますが、それを探すだけのモチベーションがない。いつものように深追いするだけの気力が湧かない。

 ということで、今回の記事はこれでオシマイにします。

 2020年5月5日からのGoogle検索「コアアルゴリズムのアップデート」により、記事更新のモチベーションが著しく低下した老舗のサイト運営者の方も多いと思います。ゴミサイトばかりが検索の上位に表示されるのでは、更新するのが嫌になります。

 そこで、本サイトも、当分の間、更新ペースを落とすことにします。
 

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