ベーリング海峡ダムとは:悪夢の計画に迫る!

ディープ・プロファイリング

はじめに

 世界には実現不可能と思われるビッグプロジェクト構想がいくつもあります。

 東京湾アクアラインなどは夢のまた夢と考えられるような実現困難なプロジェクトでしたが、現在、開通していますね。

 夢のようなプロジェクトと聞くと、良いことばかりのような幻想を抱きますが、現実には「悪夢のようなプロジェクト」になるかも知れません。巨大プロジェクトほど人間や環境に対して大きな影響を及ぼします。

 今日は、実現困難なプロジェクトの筆頭格である『ベーリング海峡ダム建設プロジェクト』について考えてみたいと思います。

 このテーマは、地球温暖化にも関係する重要なもの。巷の偽情報にだまされないためにも最低限の知識として知っておいた方が良いと思います。

 北極海のことはほとんど関心がないのが一般的な日本人でしょう。それを知るのも楽しみの一つかも。

 地球温暖化の影響で、北極海航路が注目を集めています。まさに、今が旬のテーマです。

 本サイトで北極海について記事を書くのはこれで二度目です。最初の記事は『北極海にこつ然と消えた二隻の英国軍艦!フランクリン探検隊の謎を追う』でした。かなり力を入れて書いた記事です。よろしかったらご覧ください・

 そのとき、北極海の地図がほとんど見つからず苦労しました。このため今回は、たくさんの画像を使って記事を書くことにします。

ベーリング海峡ダムとは?

 『ベーリング海峡ダム建設構想』というものがあるらしい。ところが、ネットで調べてもダム建設目的や構造がいまいち分からない。日本語の記事には肝心なことは何も書かれていない。5分で書けるような記事ばかりです。

 そこで、このアイディアの提唱者ペトル・ボリソフ・ミハイロヴィチ(Petr Mikhailovich Borisov:1901 – 1973)が具体的にどのような案を考えたのか調べてみました。以下、引用です 1)。

 Borisov氏がこのアイディアを公表したのは今から50年前の1968年のこと。

 以下の記述は、北極の極冠の氷を溶かすというPetr Mikhailovich Borisovの計画をまとめたものです。

 北極の氷が一度溶けたら、太陽の放射の殆どが宇宙に反射され、北極の氷の覆いは再形成されることはありません。

 氷のない北極海は、特にヨーロッパと東アジアの間で、海洋輸送に大きな恩恵を受けるでしょう。カナダ北部とシベリアの多くの土地は永久凍土から解放され、農業に適した土地になります。

 Borisov氏は、氷のない北極海が水の蒸発を増加させ、そのためにサハラ砂漠地域を含む世界的に降水量を増加させると信じていました。また、同氏は、北極の氷の融解による影響がすべて有益であると考えました。 彼は、グリーンランドの陸氷が溶けると、年間1.5~2mmの速度で海面を上昇させると主張しました。

 1950、60年代のソ連の気候学者は、北極の海氷の融解をどのようにすれば達成できるかについてかなりの検討を行いました。1959年にソ連科学アカデミー常任委員会がモスクワでこのトピックについての最初の会議を開催した後、1960年代初めにレニングラードにおいて同じトピックで2つの会議が開催されました。

 北極の海氷を溶かすという考えは、ハーバードの地質学者、ナサニエル・シェーラー(Nathaniel Shaler:1841-1906)が、ベーリング海峡を通して北極海に暖かい黒潮を流すことを提案した1877年にさかのぼります。

 キャロル・リヴィングストン・ライカー(Carroll Livingston Riker)は、1912年にニューファンドランドから322kmの突堤を使って、メキシコ湾流の流れの多くを北極海盆(Arctic Basin)にそらすことを提案しました。8)

 英国の進化生物学者で初代ユネスコの事務局長を務めたサー・ジュリアン・ソレル・ハクスリー(Sir Julian Sorell Huxley、1887年 – 1975年)氏は、その任期中の1946年に北極の氷冠を壊すために核兵器を使用することを提案しました。(こいつ、頭がおかしい!)

 Borisovは彼の文献の中で、北極の氷冠を溶かす最新の方法をリストアップしています。

  1. 北極の広い地域を石炭塵などの黒い粉末で覆う(G. Veksler、1959)
  2. 北極中央盆地を覆う雲を拡散させる(D. Fletcher、1958)
  3. Thomson Sillと呼ばれる海盆の間で比較的水深の浅い海水が限定的に動いている海域の境界の深化(VN Stepanov、1963)
  4. 海水面を単分子膜で覆う(M. Budyko、1962)
  5. 暖かい大西洋の水をシベリアのカラ海(Kara Sea)に導く設備(P’yankov VP、1965)
  6. 冷たい北極海の水を太平洋に流して、大西洋の水を北極海域に引き込む(PM Borisov、1968年)

 上記の最後の方法は、ベーリング海峡を塞ぐダムの建設を伴うものです。このダムの長さは74キロメートルになります。 深さは最大で58メートル。このダムは技術的実現可能です。

 ダムの目的は冷たい北極の水を太平洋に注水することです。 現在、暖かい大西洋水の流れ(北大西洋海流)は、冷たい北極海の大西洋への流れによって相殺されています。

 Borisovの提案によれば、約145,000k㎥の冷たい北極の水がダムを通って太平洋に汲み上げられ、より暖かい大西洋の水が北極海盆に流れ込む。約3年後には増加した大西洋の流れはベーリング海峡に達する。

 Borisovによると、北極海盆にもたらされる熱量は現在の472×10 ^15 kcal /年の水準から1370×10^15に3倍に増加するだろうとしています。また彼は、氷と雪が溶けることで地球のアルベド(反射能)が減少すると、年間54kcal /cm²から10 kcal /cm²に反射による放射損失が減少すると推定しています。彼は、このプロセスによって北極海の水温が1.9℃〜8.2℃の範囲で上昇すると見積もりました。

 Borisovは、ダムは約250メートルのセクションで建造することを提案しました。これらのセクションは、造船所で耐凍性鉄筋コンクリートを使って造り、建設現場に浮かべます。それらは、杭によって海底に固定されます。 彼はさらに、ダムの頂上の形状は、氷床がダム上に乗って南側で崩壊するような形にすることを提案しています。

 Borisovは、ダムの建設やポンプの運転に必要なエネルギーの一部にはコストがかからないと主張しました。 氷のない北極により雨量が増加することで、既存の水力発電所における発電効率の上昇につながるだろうと予測したのです。

 Borisovの論文は、35年前の気候学者の考え方が今日とどのように異なっているかを示す興味深い資料です。現代の気候学者は、数十年の間に、地球温暖化のために北極の海氷が溶けていくと予測しています。1)

 普通の人は、この記述を見てもどんなダムなのか見当も付かないと思います。下の方で、このダムの具体的な建造方法を紹介していますので、ここはこの程度で。

海流はどうなっているのか

 気候に大きな影響を及ぼす海流。北極海の海流はどうなっているのでしょうか。まずはこれから見ていきましょう。

 地球全体の図では北極海に流れ込む海流、出てくる海流がわかりにくい。

 そこで、北極に焦点をあてた図を見てみます。


 出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)

 上の図では、北極海の水がベーリング海峡を通り太平洋に流れ込んでいる。この図はかなり古い情報に基づいているようです。

 北極海の海流の流れについては、下の画像が最も明快に示しているようです。しかし、明快だから正しいとは限らない(笑)。

 海流の流れはとても複雑なのですが、マップに海流のフローが描かれているとそれを信じてしまいがちです。

 実際の流れは、NASAの映像で確認できます。グリーンランド側とベーリング海峡側で作りました。

20分バージョンです。下の画像をクリックするとNASAのサイトでご覧いただけます。

ベーリング海峡海底縦断図をつくる

 ベーリング海峡の海底はどうなっているのでしょうか。水深が深いとダムを造るのはかなり難しい。

 そこで、Google Earthを使ってベーリング海峡の縦断図をつくってみます。

  1. まず、Google Earthを起動。ベーリング海峡地点を表示します。
  2. [追加]⇒[パス]。海峡の最も狭まっている箇所をクリックしてパスを作成。
  3. 左側のパネル「場所」の中の今作成したパスを右クリック ⇒ [高度プロファイルを表示]
  4. 続けてその下の[プロパティ]をクリック。[標高]タブ ⇒ [海底に固定]

 これでベーリング海峡の縦断図が表示されます。

 この図が正確かどうかは別としても、海峡の水深は意外に浅いようです。深いところでも53m程度です。

気になるダム建設の影響

 「MAG2NEWS」というサイトに『武田教授が暴く、「地球温暖化」が大ウソである13の根拠』という記事が載っていました。

 期待して読んだのですが、なんだこれ? レベルのお粗末な記事でした。

 『北極の氷は海に浮いているので、アルキメデスの原理で氷が融けても海水面は変わらないが、海水面が上がっているとの報道が続いた』として「地球温暖化」は大ウソだと批判しています。この人、本気で言っているのでしょうか。

 アルキメデスの原理で説明できてうれしくなる中学生レベルの発想力のようです。

 大陸氷河のあるグリーンランドの氷河が溶け出してニュースになっています。北極海に浮かぶ氷が溶けても海水面は上昇しない。しかし、グリーンランドは違います。平均の厚さは1500メートル程度。地上にある氷が溶ければ海水面が上昇するのは当たり前のこと。北極海の氷が溶ければグリーンランドの氷も溶ける。むしろ、グリーンランドの氷床の方が早く溶けるでしょう。

 北極海の海氷の面積が大きく減少というニュースを見たら、温暖化の影響と結びつけるのはお門違いです。まず着目すべきは、北極海へ注ぐロシアの河川の流入量です。つまり、ロシア高緯度の雨量変化です。

 地球温暖化を主張したい人たちは、海水面の上昇をしきりにアピールします。過去50年間で海水面が数十センチ上昇したなどと、自分の都合の良いデータを示して説明しますが、これは嘘です。

 日本における海面水位について気象庁のホームページには次のように記載されています。

 ここ約100年間の日本沿岸の海面水位は、世界平均の海面水位にみられるような明瞭な上昇傾向はみられない。1950年頃に極大がみられ、1990年代までは約20年周期の変動が顕著である。また1990年代以降は上昇傾向と共に約10年周期の変動が確認できる。気象庁 海面水位

 日本の観測データは信頼できます。もし海面水位が100年間で数十センチ上昇していると主張するのであれば、なぜ世界の中でもトップレベルの信頼性のある日本でそれが観測されないのかを説明する必要があります。

 管理人の実家の脇の下水には満潮時に海水が入ってくるのですが、その水位は何十年経っても同じです。(実際には、地震の影響で地盤が少し下がっていますが。)

どうして誰も計算しようとしない? 海面上昇の値

 南極の氷が溶けたら○○メートル海水面が上昇する、などよく見掛ける記述ですが、その根拠となる基本データを示して記事を記載しているサイトは皆無です。

 それもそのはず、そんなことを計算できるほどのデータが存在しない!

 海面を1メートル上昇させるための水量は簡単に計算できます。概数ですが。

 地球の表面積は148,900,000 km²。その70.80%が海洋です。

 つまり、海洋の面積は、105,421,200 km²になります。

 海水面を1m上昇されるために必要な水量は、

 105,421,200,000,000 m3 です。

 桁数が多くて実感がわきませんね。計算してみると、一辺が47kmの立方体の体積です。

 厚さ1500m、265km四方の氷河という表現の方がイメージしやすいかも。

 では、この膨大な水はどこから来るのでしょうか。海面より上にある氷河がその源になります。それがあるのがグリーンランドと南極大陸だけです。

 北極の氷(海氷)が増えても減っても海面上昇には影響しない。北極の海氷は冬に増大し夏に減少します。しかし、夏に海水面が高くなるということはありません。

 では、その陸氷の量は? 誰も出典を示して書くことができない。この算出はとても難しいからのようです。概略の値が書いてある文献でも、それをどうやって算出したのかは書かれていない。

 グリーンランドの内陸部は、海面より低い巨大な内陸湖があります。この海水面以下にある湖部分の氷床が溶けると海面は低下します。しかし、地形が複雑だとそれは一概には言えません。もし、氷が完全になくなればの話です。氷の融解が途中段階だと海ではなく湖になります。超巨大な島であるグリーンランドの巨大内陸湖に海が入り込むかどうかは、氷の溶け方により変わります。


Image: Wikimedia

 グリーンランドを覆う氷の厚さは、特定の場所では最大3キロメートルで、日本の国土面積の5.7倍の面積を占めています。

 この氷のすべてが溶けた場合、海面は7.4メートル上昇する可能性とされています。

北極海と日本海ではどちかが広い?

 私たちが普段目にするメルカトル図法の地図では、高緯度の面積が拡大表示されているので、実際の大きさをつかむのが難しい。

 たとえば、北極海は日本海と比較し大きいのでしょうか?

 国際水路機関(IHO)の定義によれば、ユーラシア大陸、北米大陸、グリーンランドに囲まれた北極海(Arctic Ocean)の面積は約14,060,000 km²で、世界最小のOceanと呼ばれています。これに対し日本海(Japan Sea)の面積は約1,030,000km2です。北極海は日本海が13個以上入る大きさです。

 英語で見ると「Ocean」と「Sea」の区別があるので、違いがすぐ分かります。北極海はやはり大洋です。

ベーリング海峡ダムを造る

 悪魔のプロジェクト『ベーリング海峡ダム』を造る。

 環境にどんな影響があるかとか、そんなことを気にしていては世紀の悪魔のプロジェクトはできません(笑)。ここは、とにかく、ダムを建設することを目的とするダム建設を考えてみましょう。ある目的のためにダムを造るのではなく、ダム建設が目的です。ゼネコンさんがとても喜びそうなプロジェクトです。

 ベーリング海峡ダムは通常のダムとは性格が大きく異なります。

 通常のダムは、水を貯める目的で建造しますが、ベーリング海峡ダムは太平洋から北極海に流入する海流をダムにより遮断し、北極海の冷たい水をポンプアップにより太平洋に流すことで北大西洋海流(暖流)流入の促進を図るのが目的です。

 ベーリング海峡周辺を流れる海流は、下図のようになっています。


image source: Wikipedia

 上の図は、メルカトル図法なので、高緯度の表示には不向きです。そこで、回転する球体にしてみました。北極海との関係がわかりやすいと思います。

 上述したダム機能のため、ダムを境にして、北極海側と太平洋側での水位差はほとんどありません。また、水が漏れても問題ない。

 ダム本体は、長さ250m、高さ25~45m、幅20mの密閉型中空コンクリートブロック。水密コンクリートが使われます。これをベーリング海峡を締め切るように並べて設置します。明石大橋の橋脚のケーソンに使われる構造と同様のものを用意します。アイオワ級戦艦と同じくらいの長さです。ドックで建造し、現地まで曳航します。

 現地では、浮いた状態で使用。水を注水し、ダム天端を海水面近くまで沈めます。海底に着底させません。潜水作業が困難な環境のため、フロート式ダムにしてアンカーにより固定します。海底部分に隙間ができ水の流れはあります。冬期間は氷の重みでダム本体は数メートル沈降し、海底に着底します。ブロックをどのようにつなげるのかはノーアイディアです。たぶん、これが一番の課題でしょう。

 ポンプは、北極海の水を太平洋にかき出すのが目的ではなく、大西洋の暖流を北極海に導く流れのルートを作ることが目的となります。このため、ポンプは、一定速度の海流の発生が確認されれば運転を停止します。

 Borisovのアイディアは大体こんな感じでしょうか。ダムの建設は、技術的にはできるかも。

 問題は、本当に大西洋の暖流が北極海に流入するか疑問なこと。シミュレーションにより、ポンプの取水口の設置場所と吐出量を決めることになります。

 注意しなければならないのは、塩分濃度です。冷たい水は濃く重い。熱塩循環をどう評価するかがシミュレーションのポイントになりそうです。


 Image: Wikipedia,塩分濃度

 上の画像を見ると、塩分濃度が高く暖かい北大西洋海流が塩分濃度が低く冷たい北極海に流入していることが分かります。

 シベリアにはたくさんの河川があり、北極海に大量の淡水(地球の河川水の約10%)を供給しています。ここに温かい暖流が流入するとどうなるのか。

 北極海の海氷が減少する原因のひとつが、海水の塩分濃度が高くなり凍りにくくなるためです。北極海の塩分濃度が高くなる理由は二つあります。一つは河川水の流入が減少する場合。もう一つは塩分濃度の高い北大西洋海流が北極海の奥まで入り込み、その範囲が広がっている場合です。この二つが同時に起こる場合もあります。

 温かい水は冷たい水の上に乗るように上層部を占めるため、塩分が高くかつ水温が高いということから海氷が成長しにくくなります。

 塩分濃度の違う水は容易には混ざりません。温度の違う水も同様に混ざりません。NHK for schoolの動画を見るとよく分かると思います。

 太平洋側では、1997/1998年のエルニーニョの影響でベーリング海峡の南の海域の水温が上昇し、流氷が早く後退した影響で、多数の海鳥が餓死する事態が発生しました。

 北極海の氷が減少・消滅すると、ホッキョクグマが溺れる、という単純なものではなく、生態系に計り知れない影響を与えるでしょう。

 このシミュレーションが一番難しそうです。海流ひとつとっても分からないことだらけ。気圧や太陽の活動も影響する。黒点の数が激減している今、地球が急速に寒冷化に向かうという懸念もあります。

 シミュレーションをしたとしても信頼できる計算などできないことが分かります。計算には多くの前提条件が必要ですが、この前提条件の設定が正しいとは限らない。太陽の活動など、誰も予測ができません。

 グリーンランドの陸氷が溶けると北極海の塩分濃度が低下。それにより、鉛直方向の沈み込みが停止し、海流が停止。その結果、約1万3千年前の最終氷期の終わりに地球が温暖化に向っている時に突然の気温が急激に低下したヤンガードライヤス期のように寒冷化に向かうとの予測もあります。

 基本データの収集に100年、解析に20年、周辺国との調整に300年、ダム建設に10年。

 悪魔も笑ってしまう気の長いプロジェクトになりそうです。

ダムの建設が必要となる時がきっと来る

 地球温暖化、異常気象など、最近このテーマが話題となることが増えたように思います。

 長い目で見れば、温暖化は進行し、その影響は計り知れない、という文脈で文章を書く人が多い気がします。でも、どこか変です。

 現在の地球は、間氷期と呼ばれる壮大な気候サイクルの中にいます。いずれ必ずやってくるのは氷河期です。

 氷河期について、誰がその対策を考えているのでしょうか。寒さ対策のため、膨大な量の化石燃料を使うことになるでしょう。

 火山が大噴火すると、その影響は数年間に及び、この間は農作物は壊滅的打撃を被ります。太陽光発電もできなくなる。

 家族の誰かが飢え死にする。そして、次は自分。このリスクに備えている国はあるのでしょうか。食料備蓄5年分など、現実的ではありませんが、このような災害が起きれば備蓄があるかないかが生死を分けることになります。

 地球が温暖化に向かっているというのは間違いで、氷河期に向かっていると考える研究者もたくさんいるようです。

 極寒の冬、冷夏の年が数年続けば、地球温暖化など誰も関心を示さなくなるでしょう。むしろ、地球を温暖化するためにはどうしたらよいのかと真剣に議論するようになるでしょう。

 そのときに真っ先に議題に上るのが、今回のダム建設かも知れません。地球温暖化の切り札として、建設に踏み切る可能性はゼロではありません。

 この悪魔のプロジェクトに手を染めたとき、人類は取り返しの付かない過ちを犯したと気づく・・・、前に、死に絶えているかも。

 ベーリング海峡ダムは、魅力的なプロジェクトですが、これは悪夢のプロジェクトです。

 北極海はミネラルが豊富で、回遊魚の産卵場にもなっています。ダムを建設して、北極の海氷が消滅し、降水量が増加すると、北極海に流れ込む河川水が増加し、塩分濃度を下げることから、海流の流れが大きく変化します。この予測は不可能です。降水量の増加する量も、海底地形によって複雑に変化する海流についても、私たちは知らないし、それを高精度で予測する技術も持っていません。

 「コンピュータの計算結果は提示できます。それが合っているかどうかは神のみぞ知る」

 もし、ロシアだけでダムを建造できるのなら、彼らは造ってしまうかも知れません。しかし、対岸は米国なので、両者の利害が一致しないと建設は難しい。

 上の記述で、調査に100年と書きましたが、変化していく気候・気象の中で確実なデータを得るには300年とか500年とかの観測期間が必要なのかも知れません。

 管理人が最も懸念するのは、シベリアの永久凍土が溶けることです。それにより、有機物の分解が加速し、これまで地中に固定されていた大量の二酸化炭素が大気中に放出されることが危惧されます。

 Borisov氏は、気温が上昇すれば豊かな農地になるという根拠のない幻想を抱いていたようですが、永久凍土が溶けると、辺り一面、湿原になるでしょう。農地にするには水を抜く必要がありそうです。排水路を掘って水を抜くと地盤が下がる。平坦な地形だと水が抜けなくなる。さらに深い排水路を掘る。地盤が下がる。排水路を掘る。この繰り返し。

 もし、その地層が泥炭層だとやっかいです。有機物の急激な分解で窒素過多になり作物が育たない。火をつけると消すことができない。

 どれ一つとっても難題山積です。管理人がBorisov氏の考えにこだわったのはこのような問題が発生することを予見していたのか知りたかったからです。

 彼の専門は鉱山のようなので、環境も、土木も、農業も、全くの門外漢のようです。

 構想を立案する人は専門分野に精通している必要はありません。それを支える専門家がサポートすればよいので。

 困るのは、何の専門技術分野も持っていない人間が、専門家のサポートなしに机上で計画し、持論を主張するパターンです。その人物がテレビに出演するような知名人だと問題はさらに大きくなり深刻化します。

 地球温暖化については、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)で議論されています。

 管理人は、国連に雇われている人間は信用しません。彼らは根無し草で、次の安定した職(大学教授など)を得ることがモチベーションになっています。そのためには、国連という権威を使って実績を上げる。それが関心の的です。個人的パフォーマンスの世界です。

 Wikipediaの『気候変動に関する政府間パネル』の項を読むと、「 2007年の第4次評価報告書の場合、130ヵ国以上からの450名超の代表執筆者・800名超の執筆協力者による寄稿、および2500名以上の専門家による査読を経て作成されている」と書かれています。多くの学者が報告書に目を通し、確認している・・・・、ということをアピールしたいために書いた文書なのでしょうが・・。

 ところでさー、2500名以上の専門家による査読の意見って当然バラバラだよねー。査読者の意見が違ったら、どうするの? どう調整するの? 2500名だよ! 査読者の意見は誰がどのように調整しているの? なぜ、そのことがWikiに書かれていないの? さらに言えば、査読者の意見を調整する権限を持っているのは誰?

 実務をやったことのない人間は、何の疑問も持たずにWikiの文章を書いているのでしょうね。

おわりに

 この記事も書き終わるのに一週間近くかかりました。なかなか奥深いテーマです。

 最近の異常気象は、誰もが実感するほど激しいものです。今年の夏はとにかく暑かった。そして、これまで経験したことのないような雷もありました。台風の進路もこれまでとは異なっていました。

 二年ほど前に下の記事を書いたのですが、今年の気温を追加するとどんなグラフになるのか、考えるだけで恐ろしい。

 『今年の夏の気温上昇は本当にヤバイかもしれないことが分かるGIFアニメ

参考:
1) “P.M. Borisov’s Proposed Method of Melting the Arctic Ice Cap“、Thayer Watkins Silicon Valley & Tornado Alley USA、applet-magic.com
2) “Global Skywatch“, Borisov, Petr Mikhailovich, engineer – laureate of the Stalin Prize
3) MARINEBIO, Currents and Tides
4) “Ocean flows at surface and 2000 meters below sea level“, NASA, Scientific Visualization Studio 
5) 気象庁、海面水位
6) 『J-CAD(氷海観測用小型漂流ブイ)が示す北極海の海洋変動』、海洋科学技術センタ、2000.11.9
7) 「北極海観測の重要性」、滝沢隆俊 
8) “POWER AND CONTROL OF THE GULF STREAM“, CARROLL LIVINGSTON RIKER, 1912
9) “Arctic shock: ‘Dark river’ 1000 MILES LONG is flowing beneath Greenland“, EXPRESS, Dec. 13, 2019