ちょっと気になることがあったのでメモしておきます。
2019年3月1日午後7時57分からNHK(総合)で放映された『チコちゃんに叱られる』の番組内容と同じ内容が放送前にネットに流れていた。「“ひな人形の謎に迫る”」の内容。
番組を見て、それをパクって記事を書くライターはたくさんいるのですが、管理人が見つけた記事は、たぶん、放送前に公開されたものです。その記事には「チコちゃん」の「チ」の字も書かれていないし、そもそもそんなパクリ記事ではありません。
ひな人形の謎に迫る!
「チコちゃん」で紹介された「“ひな人形の謎に迫る”」の内容は、次のようなものです。
3月3日の「ひな祭り」の頃になるとよく耳にする「うれしいひなまつり」という歌。「あかりをつけましょ ぼんぼりに ♪」というあの曲です。
この歌詞の二番の出だしが「お内裏様(だいりさま)とおひな様 二人ならんで すまし顔」ですが、この「おだいり様とおひな様って誰?」というのがチコちゃんからの質問でした。
チコちゃんの答えは、「おだいり様は上の男女2人、おひな様はひな人形全員のこと」です。
この謎は結構有名らしく、ネットで調べるとかなり以前に書かれた記事にその答えを見つけることができます。
管理人が気になったのが下の記事です。
この記事は、3月1日に閲覧したのですが、閲覧した時間は、たぶん、「チコちゃん」の放送前です。つまり、この記事(『大人なサー(オトナンサー編集部)』)は、チコちゃんのパクリではないし、NHKよりも内容がより詳細です。
『「うれしいひなまつり」は、作詞者サトウハチロー家では話題にできないタブーだった?』
管理人は、たまたまこの記事を見つけ読みました。そして、今日、チコちゃんの録画を観て驚きました。内容がかなり似ている!
似ていると感じたのは、「うれしいひなまつり(1936年レコード発売)」の作詞者サトウハチローの『サトウハチロー記念館(岩手県北上市)』館長の佐藤四郎さんに対するインタビューの部分。
『大人なサー』の記事では、「彼の次男で、サトウハチロー記念館(岩手県北上市)館長の佐藤四郎さん(81)に聞きました。」と、まるでこの記事の執筆者(オトナンサー編集部)がインタビューをしたかのような書き方になっています。
そして、「チコちゃん」には、この佐藤四郎さんにインタビューするシーンがありました。
でも、このような同じタイミングでサトウハチロー記念館を複数のメディアが訪れたとは考えにくい。
「チコちゃん」を制作した番組制作会社のスタッフが、取材した内容を副業でやっているライターとして記事にとりまとめて投稿した。管理人にはこのように思えます。
まあ、真相はどうでもよいので、これ以上の深追いはしません。
おひな様の配置
「チコちゃん」を観ていて勉強になったのは、雛人形飾りは江戸時代に始まったと言うこと。最上段の男女の配置は、関東と関西では違うということです。
関西は、雛壇に向かって男びなが右、女びなが左ですが、関東は逆になっているそうです。
Image: flickr, TANAKA Juuyoh (田中十洋)。皆さん、ジョッキ片手に一休み。
関西は男びなが向かって右側。
そして関東は、男びなが向かって左側です。
元々は位の高い人が左側に座るため、男びなが向かって右の関西の飾り方が一般的でした。関東の男びなが向かって左になったのは、昭和天皇の即位式が初めて新聞に載って以降のこと。その時の天皇皇后両陛下の位置を参考にして、東京雛人形卸商組合が決めたのだそうです。
雛人形と聞いて頭に浮かんだのは、「和宮の雛人形」のこと。たしか、佐倉の国立歴史民俗博物館で展示されていたという記憶があります。
調べてみると、2015年に開催された特別展示でした。この掲載されている写真を見ると、男びなが向かって右、女びなが左と関西方式というか京都の方式になっています。
「おだいり様」とは御所の内裏に住む高貴な人という意味。内裏に住んでいた公家の髪型から衣装までを忠実に再現したものを「有職びな(ゆうそくびな)」といい、天皇皇后両陛下をイメージしたものが「内裏びな」です。
下の図が現在の京都御所。南側の建礼門から入ったところが内裏になります。図の中央右側の赤枠が和宮が誕生した橋本家の屋敷になります。和宮に関心のある方は、過去記事「皇女和宮の生誕地を訪ねる」をご覧ください。
ここで思い出したのが会食などのプロトコールの席順。
主役の主人から見て・・・、右側、左側と考えます。
雛壇の場合も、「雛壇に向かって」ではなく、男びなから見て右側、左側と配置していく。プロトコール上、主人の右が上席となります。男びなの側室を配置するとしたら、男びなから見て、右が正室、左が側室になります。
では、たくさんの側室も壇上に並べたいと男びなが言ったとします。その場合、どのような並べればよいのでしょうか。
作法に詳しい人に聞いても答えはないでしょう。「そんなばかげたことはしない」と叱られるかも。
歴史や作法の専門家が答えられなくても、プロトコール上は答えは一つです。
男びなを基点に、男おびなから見て、①右(正室)、②左(側室1)、③正室の右に側室2、④側室1の左に側室3・・・という順番で配置します。いくら側室がいても問題ない。側室がたくさんいた徳川家斉の場合でも側室を延々と雛壇に並べることができます。
でも、おひな様は、武家社会ではなく、貴族社会を反映しているのでしょう。したがって、男びなは天皇、女雛は皇后。
この並びの記述を読んで、なんか変だと思われた方もいるでしょう。
そういう人を管理人は好きです。答えは自分で考えましょう。
プロトコールの基本は,原則として「右上位」です。しかし、日本では飛鳥時代から変わらず「左上位」でした。この右・左は正面から見てではなく、並ぶ人から見て、です。
ひな人形のおさがりはNG?
一般社団法人 日本人形協会のホームページに掲載している「ひな人形のおさがりはNG?日本人形協会が節句人形の啓発マンガを無料公開!」が物議を醸しています。
協会の主張は、①おひなさまは「平安時代のお人形(ひいな)遊びと、簡素な人形(ひとがた)に自分の厄や災いをうつして川や海に流した流しびなの行事が結びついたものが原形」、②今のような人形は江戸時代からで、立派な人形を作ったために『1年で流すのは非常にもったいない』となり、厄を人形の中に封じ込め、飾る必要がなくなったときに供養するものになりました。その人の厄が入っている人形だから、人形を受け継ぐことは厄を受け継ぐことになってしまいます。」というもの。
そして、
「子供の頃に飾っていた節句人形を、ご自身のお子さまに飾っていませんか?
正しい知識を身に着けるために、漫画でわかりやすく知識を身につけましょう! 」
と、不安を煽ります。
日本人形協会は、これまで超高価な人形を消費者に売りつけていたとの反省に立ち、今後は、一代限りの消耗品としての安価版雛人形の販売のみにします、ということなのでしょうか。
都合のよい部分をつなぎ合わせるとこのような解釈になる。伝統文化といいながら、文化の変遷には無頓着。
和宮の雛人形は、どうなのでしょうね。厄がいっぱい詰まっている? まるで呪いの雛人形のようです。
高価な人形を製造・販売している会社の集まりである協会が、このような主張をすること自体、とても奇妙です。これでは高い雛人形などだれも買いたくなくなる。
正しい知識を身につけなさい! 値段の高い人形を買っても厄の詰まったものなので、使い回しは厳禁です。したがって、高価な雛人形など買うものではありません。そんな高価な雛人形など江戸時代に始まったもので、正しくは、使い回しせずに厄とともに流してしまうもの。正しく廃棄処分しましょう。
社運(協会運)をかけて、世に問います。高価な雛人形を買うのは、まったくの無駄です。他人からもらうと呪われますよ!
管理人には、このように聞こえるのですが。
厄が詰まった高価な人形なら、それから厄を取り除く方法を考えるのが「伝統文化」。何でも水に流せばよいと考えるのだけが、日本の伝統文化ではありません。結局、日本の文化の意味を理解できていないのだと思います。
伝統も文化も常に変化しています。そうでなければ未来につながらない。古いものの維持継続が伝統ではないことは、人形を作っている職人が一番知っているはず。
結局、「正しい知識」という部分が書きすぎなのでしょうね。