2023年12月3日15:02 共同通信配信の「存在しない国と覚書署名? パラグアイ、政府幹部を解任」が気になったので、調べてみました。
共同通信の記事はとても短いもので、何が何だか分からない。
【サンパウロ共同】南米パラグアイの農牧省幹部が、存在しない国と協力関係を約束する覚書に署名したとしてパラグアイ政府はこの幹部を解任、文書の効力を否定した。国内外のメディアが2日までに報じた。
同省幹部チャモロ氏は10月「カイラサ合衆国」の代表を名乗る人物と面会し、パラグアイ政府がカイラサとの外交関係樹立を検討したり、国連などへの加盟を支持したりすることを促す内容の覚書に署名した。
カイラサの代表を名乗る男性2人はパラグアイ南部や東部の市に防災や医療などの協力を申し出、姉妹都市提携を結ぶ文書にも署名していた。
出典:共同通信、2023.12.03
管理人が気になったのは、農牧省の幹部って肩書きは何? ということと、「カイサラ合衆国」って何か、ということとでした。
この配信記事を読んで、意味が分かりますか? 外国政府代表団との覚書に署名できるのは、どの肩書きの人物ですか。なぜ、幹部としか書かないのでしょうか。
「カイラサ合衆国」についての説明もありません。不思議な記事ですね。ネット配信記事は嘘が多いので確認してみます。
署名したのは農牧省官房長
まず、最初の疑問です。署名したのは誰か? 幹部だとか首席補佐官だとかいい加減な情報が流れていますが、肩書きは?
Paraguay destituyó al jefe de Gabinete del Ministerio de Agricultura y Ganadería (MAG), Arnaldo Chamorro, luego de que este admitiera que firmó un memorando de entendimiento con representantes de los Estados Unidos de Kailasa, un país que no existe.
RT, “Destituyen en Paraguay a un funcionario que firmó un acuerdo con un país que no existe”
署名したのは、農牧省大臣官房長のアルナルド・チャモロ(Arnaldo Chamorro)氏のようです。
官房長が大臣の承認を得ずに勝手に覚書に署名したことから更迭されたようです。でも、これって、嘘ですね。大臣官房の長が大臣に報告せずに覚書に署名することなどあり得ません。
「カイラサ合衆国」って何?
「カイラサ合衆国」とは何なのでしょうか。
調べてみると、Wikipediaに「カイラサ合衆国」が項目だてされていました。
カイラサ合衆国(カイラサがっしゅうこく)は南米のエクアドルに存在するミクロネーション(自称国家)。国際連合の会議に国家を名乗り参加したことなどで話題となった。
インドのティルヴァンナーマライに1978年に生まれたニトヤナンダ・パラマシヴァムは、12歳で強烈なスピリチュアル体験を経て、22歳で完全に悟りを開いたとし、24歳からヒンドゥー教の導師として本格的な布教活動を開始した。布教で信徒・弟子を増やすと、翌年には修道院を建設するほどの成長を遂げたが、一方、2010年より女性信者に対し、性暴力で逮捕され、その数年後には子どもを誘拐した上修道院に監禁するなどの事件を起こし逮捕されている。ニトヤナンダは裁判の直前に姿を消し、以来4年にわたり行方をくらませていたが、しかし、その間もSNSなどを通じて信者を増やし続けた。また、ニトヤナンダは詐欺師とも報じられている。
そして、2019年12月ニトヤナンダはすべてのヒンドゥー教徒のために“宇宙国家”創設を宣言した。国名はヒンドゥー教のシヴァ神が住むとされる聖地カイラス山にちなみ国名を「カイラサ合衆国」と定め、独自の政府や省庁の発足と、金色のパスポート発給、首都機能を自身が購入した南米エクアドル沖合の島に置くなど発表した。しかし、エクアドル政府はこれを否定している。また、カイラサ合衆国の広報は日本メディアの取材に対し、「カイラサは悟りを開いた古代ヒンズー文明国家の復活であり、世界中の複数の国家にあるNGOグループを通し運営されています。国境を持たないサービス提供型の国家です。」と回答している。
Wikipedia, 「カイラサ合衆国」、日本語版
2020年、彼はカイラーサという自称島国の建国を発表した。
その後、2023年1月にアメリカ、ニュージャージー州の都市、ニューアーク市と姉妹都市の提携を結んだことを発表したが、国として存在していないことが発覚したため後に破棄されている。また、同年2月24日にスイスのジュネーブで行われた国際連合の会合で「カイラサ合衆国」大使を名乗る女性が出席し、「カイラサ合衆国」を代表して発言します。カイラサはヒンズー教徒の最初の独立国家であり、最高司教であるニトヤナンダ・パラマシヴァムが創設しました。カイラサでは食料や教育、医療などをすべて無料で提供しています。」と発言した。この会合は女性差別などについて話し合うもので誰もが参加できるものであったが、国連は、大使と名乗る女性の発言を無視すると表明した。
英語版Wikiも閲覧しましたが、かなり詳細に書かれています。結果、感じたことは、カルト教団であるということ。オウムが喜びそうな教団です。かなりの資金を持っていそうで、やり手の幹部がいるのでしょう。
30年以上前のオウム事件は、国内だけで収まりましたが、もし、これが現在だったとしたらとても恐ろしいと感じました。
麻原はどこか外国の島を購入し、独立国を宣言。国として認められるためにあらゆることをする。なにしろ、独立国の外務省には、あの上祐氏がいるのですから、メディアは全く歯が立ちません。
メディアって、お手軽情報を流しているだけです。その証拠に、イスラエル・パレスチナ戦争で、ハマスの主張、公式見解を見た人はいますか。報道内容はすべて、イスラエルの主張をベースにしたものです。たまに現地のインタビュー報道がありますが、パレスチナ側は一般市民しか出てきません。ハマスはどこ? 当事者のハマスの公式見解が一切報道されていないのです。
このような偏った報道の結果は「人道的○○」というおきまりの報道に終始しています。紛争の片方の当事者の責任には一切触れず、情報を出している側だけ攻撃する。今回の紛争の直接の責任者であるハマスの見解が一切報道されないのは奇妙です。メディアが報道すべきことは、パレスチナの住民がハマスをどう思っているかに焦点を当てるべきです。
もし、オウムの活動が30年後の現代だったとしたら、とても恐ろしい。「カイラサ合衆国」を遙かにしのぐ勢力を持っていたことでしょう。
「カイラサ合衆国」のホームページ
エクアドルの沖合にあるとされる「カイラサ合衆国」ですが、ホームページもYouTubeチャンネルも「X」サイトなどたくさんのSNSサイトが存在します。YouTubeのチャンネル登録者数は38万人!
国家の要件である領土を持たないのですから「国」という訳語を使うと誤解を与えます。英語では「ミクロネーション(micronations)」という単語を用い、「存在の法的根拠を持たない自称主権国家」としています。「カイラサ合衆国」という単語は使うべきではないでしょう。使うとしたら「カイラサ」でしょうね。
井上ひさしの「吉里吉里国」のようなものかと思っていたら、かなり大規模な活動を行っている宗教組織のようです。
危ない宗教には関わらないのが一番です。