ありそうで無いことや、無さそうなのに遭遇するということも、意外に経験します。
その一つの事例が、「車のひき逃げ」。
自宅近くの道路に、「○月○日にひき逃げ事件が発生しました。・・・最寄りの警察署へ・・・」という看板を見かけました。それが撤去されたと思ったら、別の場所に、同じような内容の新たな看板が立っています。ひき逃げ事件ってかなり多いという印象です。
さて、たまたまひき逃げ現場に遭遇したあなたは、とっさに、スマホで写真を撮りました。
画像がブレないように注意していたのですが、とっさに撮影したため、ピントがあっておらず、ピンぼけ写真になりました。逃走した車のナンバーが写っているはずなのに、全く読めません。なお、以下の画像は事件とは関係ありません。架空の話です。念のため。
今日は、こんな時に、ひき逃げ犯人の車のナンバープレートを撮影したピンぼけ写真から、ナンバーを読み取る方法を紹介します。
かなり前置きが長くなりました。その理由は最後に説明します。
先ずは、逃走した車のナンバープレートの写真をご覧下さい(下の画像左側)。車のナンバーは全く判読できません。そして、画像処理したものが右側です。
犯人のナンバープレートをはっきりと読み取ることができました。
さて、これは、どうやっているのでしょうか。
管理人が実際にやってみた画像が下のものです(GIFアニメ)。
「こんなの画像にシャープをかけただけじゃん」と思った方もいるかも知れませんが、シャープ機能では、このように文字が鮮明にはなりません。やってみれば分かります。
上の二枚の画像のうち、最初の画像を処理して作ったものが二枚目の画像(gifアニメ)です。切り取って使っています。つまり、画質が良くないということが分かると思います。それなのに、ナンバープレートを読めるだけ画質が向上している。
どうやったの?
今日は、このような画像補正が簡単にできるソフトを二つご紹介します。
Focus Magicを使う
これは、「Focus Magic」というソフトを使っています。このソフトは単独のスタンドアローンとしても一応使えますが、Photoshopのプラグインとして使うのが一般的でしょう。
このソフトには、二つの機能があります。「Fix Motion Blur」と「Fix Out of Focus Blur」です。
ナンバープレートの文字をきれいに表示するには、後者の「Fix Out of Focus Blur」を使います。
なお、前者の「Fix Motion Blur」は、被写体が動いている画像を修正するときに使います。
さて、Photoshopに「Focus Magic」をインストールすると、[フィルター]の中から選択できます。「Fix Out of Focus Blur」を選択すると下の画面が表示されます。
設定するのは、以下の四項目です。
① Image Source
② Blur Width [of an edge, in pixels]
③ Amount [that will be applied to the image]
④ Remove Noise [dust/scratches]
設定項目はわずか四項目しかないのに、このソフトを使うのは意外に難しい。闇雲に設定をいじっても良い結果は得られません。通常は、設定をいじっていると使い方を体得できるのですが、このソフトは違います。
良い結果を得られるには、以下の手順で行います。
1.対象部分のピクセル数の計算
今回はナンバープレートの英数字をクッキリ表示させるのが目的です。他の部分は無視します。
画像を拡大していくとピクセルが見えてきます。クッキリさせようとしている文字の線の幅のピクセル数を数えます。今回のサンプルでは概ね10ピクセルの幅があることが分かります。
2.「Amount」の設定
「Amount」は修正をかける「量」ですが、これは、0%~300%まで設定できます。最初は、最大の300%に設定してみます。プレビュー画像の結果を見ながら、できるだけ大きな数字から徐々に小さくしていき、文字を認識できる最大の値に設定します。
3.「Blur Width」の設定
1.で計算したピクセル数から1を引いた値に設定します。このサンプルでは、10-1=9、なので、ブラーの幅を[9]に設定します。
これで、文字がクッキリ表示されます。
後は、最もきれいに表示されるように「Amount」と「Blur Width」の値を微調整して、最適な設定を選びます。
4.[Image Source]と[Remove Noise]の設定
上の3.までで設定はほぼ終了です。あとは、[Image Source]と[Remove Noise]の値を変化させて、最もきれいに表示されるように設定します。
説明は以上です。
このように説明すると、このソフトが素晴らしいものに思えるのですが、実はそうとも言えない。
問題は、いくつかあるのですが、最初に強調しておきたいのは、このソフトを使ったからといって、必ずしも良い結果が得られるわけではないこと。今回の記事で、「ひき逃げ現場で撮影したピンぼけ写真からナンバープレートを識別する方法」という記事のタイトルで、「ひき逃げ犯人の車」の話に設定した理由がここにあります。写真全体をきれいに加工できるソフトではないということです。
特定の目的のために使うにはある程度便利ですが、万能なソフトではないので、慌てて購入しない方が良いと思います。 価格はUS$65です。トライアル版で使ってみて、自分の目的に合う機能であれば購入を検討してみてはいかがでしょうか。
最後に、警察が公開している容疑者の画像について書きたいと思います。
警察が公開しているオレオレ詐欺など容疑者の写真は、防犯カメラで撮影された動画をもとに作られていますが、よくよくみると画像処理がとても良くできています。防犯カメラの画像は、画質が悪く、顔の判読が難しいものが多いと思いますが、公開されている容疑者の写真はかなりクリアに修正されています。
どのようなソフトを使っているのか分かりませんが、そこら辺で入手可能な市販のソフトではなく、かなり高性能な画像処理ソフトのようです。
「Smart Deblur」を使う
二つ目にご紹介するのは「Smart Deblur」というソフトです。
このソフトは無料で、「GIZMODO」からダウンロードできます。開いたページの最後の写真の直下にダウンロードリンクがあります。
このソフトで同じ写真を修正してみました。下の写真の左側と冒頭の写真を比べて下さい。
「Focus Magic」よりこちらのソフトの方がきれいに仕上がり、文字が鮮明です。ナンバープレートの最後の文字まで確認できます。
この設定数値は、以下の通りです。試して見たい方のためにメモしておきます。
Radius 5.4
Smooth 73%
Correction Strength -99%
Edge Feather 1%
ソフトの操作方法は簡単なので説明は不要だと思いますが、一つだけ重要なことを書きます。
ソフトには「スライドバー」がありますが、これを使うとぼやけた画面になるという不具合があります。このため、最初にスライダーを使って、各設定の変化を確認し、最良の結果が得られる設定数値を覚えておきます。スライダーを離すとぼやけた画面になります。
そこで、最後の仕上げは、『スライドバーが乗っているラインの上を軽くクリック』してスライドバーの位置を微調整して覚えて置いた数値に近づけます。そうすると画面がぼやけたりしません。
この不具合は、ソフトのバグだと思います。
更新版があるようなので、そちらでは改善されているかも知れません。
(ダウンロード版は Ver,1.27で完全に無料です。最新版はVer.2.2で、トライアル版になっています。確認していないので、トライアル版なので利用制限があるかも。)
Focus Magicよりもこちらの方がとても使いやすい。お奨めです。
この方法は、駐車場での当て逃げ犯人を捕まえるのにも役立つかも知れません。監視カメラの映像から当て逃げした車両のナンバーを読むことができるかも。